ユニ・チャームが「2023年度有力卸店会」実施、「共生社会」実現へ更なる挑戦

先見対応力で推進する価値転換へ
ユニ・チャームは3月9日、東京都港区のオークラ東京に取引のある卸店39社のトップらを招き「2023年度有力卸店会」を行った。4年振りのリアル開催となる中、熱のこもった方針説明などを行い、製配相互の懇親を深める場となった。
冒頭、高原豪久社長が全社方針を示し、直近の業績を振り返りつつ「コロナ禍を言い訳にして、何もせずに来てしまい、様々な取り組みへの着手、商品開発などがスローダウンしたとの反省がある。円安の影響で多少の増収にはなったが、原材料価格の高騰がそのまま減益につながっている。そうした中でも、マスク、生理用品、ウエットティシュなど、コロナの前後で市場のサイズが大きく変化した。衛生用品を扱うメーカーとしての使命を全社員が感じ、需要と供給を維持できたと思っている」と述べた。その上で「今年の決意を表す漢字一文字を『先』と決めた。何もできなかったとの反省を踏まえ、まず先手で動こうという気持ちが芽生えたものである。先手必勝はもとより、難しい一年になること、周囲の変化の方が自社の変化より先に起こるとの予測もあり、後手でも必勝との思いを込めた。先手を取る場合の先見力と、後手になった場合の対応力の両方を持つ先見対応力が必要だと言える」と強調した。
また、価格改定を実施した大人用中度パンツやペットフードの例を挙げ「価値転嫁が重要。価格改定後も継続した売り場改善を進め業界総資産の拡大を実現している。今後も、向上した商品価値を消費者に十分に理解してもらうために尽力していきたい」として「消費者の購買は、2019年を100とした場合、22年に『ムーニー』で約1・6倍、『ソフィはだおもい』で約3倍と拡大した。ペットフードも健康機能食で36億円伸び『超熟睡ショーツ』は8倍近い成長を見せた。」と説明。更に「インターネットで自分の生活が豊かになった、値段が高くても気に入れば購入するという人の世代間格差が小さくなってきている。年齢よる違いよりも、個人の価値観の多様化が進んでいることに注目したい。いわゆる“消齢化社会”における価値観を表している」と、購買行動の変化にも触れた。
また、SDGsの達成に貢献することをパーパスとして掲げる企業として「『共生社会』の実現、『NOLA&DOLA』の実践、『共振の経営』を通じ、事業として、人として、何を持って社会に貢献するかを明確にしている」と述べ、それぞれ取り組んでいる内容を紹介した。これによると、海外売上高比率は22年で66・3%となり、海外社員比率も84・1%に達していること、また海外の女性管理職比率は29・2%まで上昇しているという。
人的資本の強化についても言及し「そのために07年から執行役員合宿を国内外で実施している。非日常の世界を経験することで、その後の仕事に生かしていこうというもので、計画を実行して達成するためには、日常の延長線上には無い挑戦や努力が必要との考え方に基づいている。昨年はタンザニアのさくら女子中学校を訪問し、生徒といろんな話をして学ぶことが多かった」と述べ、加えて「当社の行動憲章『ユニ・チャームプリンシプル』では、これを遵守する企業文化の浸透が不可欠としている。そのために社員一人ひとりとのコミュニケーションが重要で、全社員の誕生日にメールでのやりとりをしたり、中堅社員が社長の経営を直接学ぶ戦略担当秘書を設けたり、身近な先輩社員としての基礎体力要請や人間力向上を目刺した『ブラザー&シスター』制度など、様々な人事制度、仕組みを、日本だけでなくグローバル共通のものとして取り組んでいる」と語った。
継続的な来店目的を形成し、顧客を拡大していくことを目指す
続いて渡辺勉常務執行役員ジャパン営業統括本部長が、ジャパン営業本部方針を説明した。 「ユニ・チャーム流 3つの価値転嫁」として、カテゴリーごとの商品構成を変える「構造改革」、消費者の多様化に応える新商品を育成する「新需要創造」、ロイヤルユーザー増大のために公平・公正な価格設定を臨機応変に行う「価格安定(出荷価格改定)」を挙げつつ「流通の皆様との協働による不変の大方針として、成熟市場での勝ちパターンを構築していきたい」と力を込めた。合わせて、今年2月に実施した価格改定後の動向、春の新商品などを紹介しつつ「これまでの価値転嫁は値上げに終始していたが、これからは継続的な来店目的を形成し、顧客を拡大していくことを目指す。購入カテゴリー数のアップ、消費者ニーズのくみ取り、新商品で既存品をカバーするなどして、平均単価の上昇が終了した後も顧客創造で売り上げ拡大を図る」と述べ、卸店と協働で売り場改善のためのキャラバンを実施することなどを明らかにした。
また、元サッカー日本代表監督で、ユニ・チャームがスポンサードするFC今治の運営企業で会長を務める岡田武史氏が登壇。サッカー界及び経済界におけるこれまでの経験を踏まえ講演した。
(詳細は「日用品化粧品新聞」3月20日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)