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【花王・アース製薬】虫ケア領域で初の協業

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【花王・アース製薬】虫ケア領域で初の協業
タイで蚊駆除スプレー 7月発売

 花王とアース製薬の両社は虫ケア領域で協業し、共同開発した蚊の駆除スプレー「ARS Mos Shooter(アース モスシューター)」を7月からタイで発売する。これに先立ち2月29日、東京都千代田区の日比谷三井カンファレンスで会見を開き、花王・長谷部佳宏社長、アース製薬・川端克宜社長が協業の経緯や今後の方針などを説明した。

シナジー拡大で課題解決へ

 今回の協業は、蚊による感染症が拡大していることが背景にあり、その社会解決に貢献したいという両社の思いが一致したことで実現したという。中でもデング熱は蚊が媒介するウイルス性感染症の一つで、ワクチンや治療薬が存在せず、2023年は死者数が過去最高を記録するなど増加の一途にあり、蚊の生息地域や感染地域の広がりから、東南アジアを中心に問題となっている。これに対して、化学合成殺虫成分を配合しない商品を提案することで、使用場面を拡大し、新たな需要を創造していく狙いもある。

 花王が開発した、表面張力の低い界面活性剤水溶液を蚊に付着させることで飛行行動を妨げノックダウン状態にできる技術を応用し、細かいミストで蚊を落下させ駆除するスプレー「アース モスシューター」(レモングラスの香り、フローラルの香り、各370㎖)として商品化。両社のタイの拠点で分担して製造し、現地で日用品を展開し虫ケア分野では市場2位のシェアを持つアース製薬がタイで販売する。

 会見の冒頭で登壇した川端社長は、蚊などによるベクター媒介性疾患は全感染症の17%以上に上り、その死者数は年間100万人以上であること、デング熱は4億人近くが感染し、死者が約2万人を数えること、更に感染そのものが拡大しつつあることを説明した上で、タイにおける自社の活動が伸長し、虫ケア分野でのシェアは16・5%で第2位、トップを走る日本市場以外では初のシェアナンバーワンを目指していることなどを紹介した。

 続いて長谷部社長は「花王は“みらいの命を守る”をビジョンとして掲げて事業を展開している。10年ほど前からは、菌やウイルスに加えてベクター感染への対策も研究も進めてきた。蚊の本質を追究する中で、界面技術を生かし、水を武器にできないかと考えてきた。昨年6月に技術発表、7月20日にはアース製薬様と共同でプロジェクトを発足。その後半年ほどしてここまで漕ぎ着けた」と経緯を述べつつ「自分たちで展開することも考えたが、できるだけ早く多くの人々の命を救いたいとの思いから、最も虫の研究が進んでおり、信頼に足るブランドを持つアース製薬様と組まない手は無いと考えた」と説明。

 また「自分たちで虫ケアの市場を一からつくり上げ、信頼を獲得していくには時間が必要。それよりは虫ケア研究のリーディングカンパニーと共に、いち早く市場にお客様に届けられることを選択した」と、協業に踏み切った理由も語った。今後は「商品を通じて新市場を創造していくことに加えて、それぞれ別々に進めていたことを一本化することについても話を進めていきたい」(川端社長)とし、他の地域についても「日本でも発売したいところだが、優先すべきは命の危険にさらされている地域。それでも最近は台湾でもデング熱が発生し、日本では蚊が北上している。近いうちにエリア拡大を図りたいとの思いはある」(長谷部社長)という。

 売り上げ目標などは「数年で数億円の見込み」(川端社長)とするにとどまったが、更なる関係強化については「命を守る活動において、これまでやれなかった、やってこなかった部分を進めることで事業を拡大していく」(長谷部社長)、「花王様とはいろんな話ができるのではないか。グループ会社のバスクリンでは肌の健康を考えた展開をしており、お互いが強みを生かせることはたくさんあると考える」として、シナジー拡大の可能性も示唆した。


(詳細は「日用品化粧品新聞」3月4日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)
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