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【サステナビリティ特別インタビュー/ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング 篠原亜季副社長兼営業本部長】多くの人々と共にパーパスを実現へ

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【サステナビリティ特別インタビュー/ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング 篠原亜季副社長兼営業本部長】多くの人々と共にパーパスを実現へ

 一人でも多くの人が勇気を持って踏み出せる社会を目指す

 「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」をパーパス(存在意義)とするユニリーバ。パーパスを持つブランドは成長する、パーパスを持つ企業は存続する、パーパスを持つ人々は成長する――との信念のもと、日々の事業に取り組んでいる。ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの篠原亜季副社長兼営業本部長に、サステナビリティの実現に向けた日本市場での取り組みと意義について聞いた。

 ――サステナブルなビジネスのグローバルなリーダーとなることを目指して、2021年に「ユニリーバ・コンパス」を導入しました。
 「2020年までの10年間、ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランを展開してきましたが、その間にも、想定していた以上に世界で起きている問題が深刻さを増していると受け止めています。前プランは、どちらかと言えばマイナスをゼロにするような、例えば環境負荷を減らす、人々が病気にならないようにするといった取り組みが中心でした。しかし、それだけでは問題解決には足りないということで、自然を再生する、人々が自信を持って健やかに暮らせるようになるといった、ゼロからプラスに転じるものを追加したのがユニリーバ・コンパスです。サステナビリティは浸透していますかとの質問をよくいただきますが、五つの戦略的選択とアクションにまとめられ、より分かりやすくなりました。その中にある『パーパスとイノベーションを通してよりよい未来への力となるブランドで勝つ』というのは、メーカーとして必要なことだと思います」
 ――パーパスを持つブランドがもたらす影響とは、どういったものでしょう。
 「ある調査では、パーパスを持つブランドは、持たないブランドに対して175%早く成長するという結果が出ています。当社でも同じような傾向が見られます。成長のためにパーパスは欠かせないのです。そのため、新製品やキャンペーンだけでなく、日々の営業活動、人材育成などにもパーパスを取り入れているところです」
 ――そうしたブランドの展開状況についてお聞きします。
 「基幹ブランド『ラックス』の信念は、自分自身を美しいと思えることが自信になり、一歩踏み出す勇気につながるというもの。その踏み出す姿勢こそが美しいということを伝えたいと考えています。社会の固定観念にとらわれず、一人でも多くの人が勇気を持って踏み出せる社会を目指すことがラックスのパーパスなのです。今年上半期には、約2年ぶりとなる新シリーズ『ラックス バスグロウ』を発売しました。高い機能性やトレンドを取り入れたパッケージで好評をいただいています。このシリーズで新たなユーザー層にパーパスを伝えることができ、20~30代の獲得にも成功しています。ブランド内でのプレミアム化も果たし、これを通じてカテゴリーの成長にも貢献しています。TWICEとのコラボ企画も好評で、キャンペーンには1万8000件もの応募をいただきましたし、SNSのインプレッション数も通常の15倍となりました」
 ――こうした施策は下半期にも実施するのでしょうか。
 「上半期で学んだことを生かし、更にスピードを速めていきたいと考えています。商品面では『ラックス ルミニーク バランス』シリーズを投入します。外見も内面も、バランスの取れた余裕のある女性になりたいというインサイトに応えるもので、“深呼吸シャンプー”という新習慣を提案し、理想の自分に近づいてほしいという願いを込めました。また『ラックス スーパーリッチ』はトリートメントを全面改良し、TWICEとのコラボ企画も第2章として“踏み出そう。あなただけの美しさ”をテーマにキャンペーンを展開します」
 ――『ダヴ』ブランドも明確なメッセージを打ち出して展開しています。
 「ダヴのパーパスは“あなたらしさが、美しさ”です。すべての人が自分の美しさに気づくきっかけをつくることを目指し、製品に加え、自己肯定感の向上につながるプログラムも提供しています。上期には、更に環境対応にも力を入れました。泡洗顔料をリニューアルし、肌への負担が少ないだけではなく、生分解性成分96%の処方を採用しました。これは、ユニリーバ・コンパスで掲げる“自然の保護・再生”のための取り組みです。また、技術的に難しいとされる再生ポリエチレンを容器の一部に採用しています。これは“ごみのない世界”のための取り組みです。一方で、ワークショップ『Free Being Me~大好きなわたし~』を実施しています。これにより、60%の人が容姿への自信が大幅に改善されたといい、また、自信が高まり学校生活や部活動に良い影響があったと感じるという人が70%に上っています。こうした活動は少しずつ、継続的に行っていくことが重要だと思います。下期には新製品として『ダヴ ボディウォッシュ ライスファーメント&キンモクセイ』を発売しました。コロナ禍で高まるスキンケアニーズやキンモクセイの香りのトレンドを捉えたものです。一方で、環境対応面では、洗顔料のアテンションシールを無くし、製品に情報を印字するようにしました。今後ラックス、ダヴ、クリアなど主要ブランドから順次アテンションシールを外し、プラスチック使用量5・7トンを削減していく見込みです」
 ――教育の現場でも、様々な取り組みをされているようですが。
 「ダヴにおいては、自己肯定感を高めるアクティビティの拡大強化を図ります。従来のワークショップに加えて、全国の高校にアプローチして授業を実施しており、1カ月間で約1万人にこの授業を受けてもらいました。自分のありのままの美しさを感じるきっかけになることを、製品やアクティビティを通して進めていくことが、ダヴの役割と言えます」

 サステナブルな未来に貢献するため会社一丸で取り組む

 ――各ブランドはもとより、全社的にも様々な取り組みを進めています。
 「再生エネルギーへの100%切り替えは2015年から、働く 場所と時間を社員が自由に選べる働き方“WAA”はコロナ禍以前の2016年から導入しています。更に、商品の量り売り、空き容器の共同回収なども進めています。これらは、一部の部署だけでなく、社内の全員が当事者として進めているのが大きなポイントです。例えば営業部門では“UMILEプログラム”や“あしたにエールキャンペーン”などを立案し、流通の皆様と一緒に取り組めるものとしてつくり上げました。また、空き容器の回収拠点は小売業様を始め、鉄道会社、自治体、大学などとも協働で取り組んでいるところです」
 ――取引を進める上で、物流面での対応も必須となってきましたが、この点ではいかがでしょう。
 「トラックのドライバー、物流従事者の方々はもちろん、地球環境にも負担が少ない、よりサステナブルな物流の実現を推進してきました。それを更に進めるために、昨年4月に新たな取引制度を導入しています。これによりホワイト物流が当たり前になる世界を目指しています」
 ――これらの施策を成功させるためのポイントは何でしょう。
 「やはり、人だと言えます。一人ひとりがパーパスを持つことが重要ですが、パーパスを即答できる人はなかなかいないものです。そこで、パーパス・ワークショップを行い、自分のパーパスは何か、会社のパーパスとの共通点は何か、どうすれば仕事を通して実現できるかをしっかり見つけることを進めています。ESG、CSR、サステナビリティといった言葉は自分とは遠いものと感じがちですが、サステナブルな未来に貢献できることは何かを考え、社員が一丸となって取り組んでいるのがユニリーバという企業だと言えます。企業として、ブランドを通して、また社員を通して、多くの人々と共にパーパスを実現させたいと考えています」

 (詳細は「日用品化粧品新聞」9月26日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)

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