【家庭紙市場】ソフトパック伸長、今後の物価高による影響は
倍巻きは企画、表現統一の検討も続く原燃料や物流費の高騰を背景に、価格修正が毎年のように行われる家庭紙市場。単価アップは着実に図られているものの、それでも絶えないコスト上昇により、適正利益の確保にはもう一段階上のレベルに押し上げなければならない状況だ。そんな中、商品面ではティシュのソフトパックタイプ、トイレットロールの倍巻きが依然伸長。これらは市況にどういった影響を与えているのか。
経済産業省が発表した昨年の家庭紙の販売数量の前年比は、ティシュが3・6%減、トイレットロールが1・6%減、タオル用紙が2・4%減という結果だった。一方で、金額はティシュが11・5%増、トイレットロールが11・1%増、タオル用紙が9・5%増と、価格修正の効果が鮮明に表れた。
東京紙商家庭紙同業会が発表した安値~高値の価格調査(税込)では、2年前の2022年5月と24年5月を比較すると、ティシュ(180~200組)は、327~437円から437~470円に、ティシュのソフトパック(150~160組)は、217~261円から239~272円に上昇。トイレットロールも再生紙(55~60m12ロール)が272~327円から327~360円に、パルプ(60m12ロール)が470~514円から547~580円に上がっている。
数年前であれば、集客の商材として価格訴求の代名詞的存在でもあった家庭紙が、小売業から「利益が取れる商材」としての認識を徐々に獲得。「以前であれば、春先や年末など特売の多い月と、そうではない月の出荷量に大きな差があったが、最近では、その動きも平準化してきている」(卸売業関係者)ことから、チラシ商材からの脱却が明らかに進んでいることがうかがえる。
更に、今年の4月以降も大手中小問わず各社が価格修正を実施。その効果が、今後出てくることが予想されるが、ここからもうワンランク上げるには、やはり、更なる付加価値化が重要になってくるだろう。
ソフトパック、倍巻きの動向に更に注目
商品面では、近年伸び率の高いソフトパックティシュと倍巻きトイレットロールの勢いが継続。市場構成比では、前者が約28%、後者が約40%を占めるに至っている。
ソフトパックティシュは、輸入物を中心に「低単価」を強みにユーザーの裾野を拡大してきた。しかし、ここ1、2年は、大手が保湿系やファーストブランドの商品を投入。「持ち運びに便利で場所を取らない良い紙質のものを使いたい」といった新たな需要を構築しつつある。
ただ、依然として価格の安さを求める生活者は多く、特に「身の回りのあらゆる価格、料金が上がっていることから、低価格の商品に移行するユーザーが再び増えているように思う。これまでの動きからすると、もっと高品質・高単価品のシェアが伸びると思っていた」(メーカー関係者)と、先行きを懸念する声もある。
実際、価格訴求型の輸入ソフトパックは今年4月、直近3年間で最も多い輸入量を記録している。
倍巻きトイレットロールは、シェアが4割近くに達すると、もはや「何の商品の倍なのか」という疑問が生活者の間で生まれても不思議ではなく、更に、市場では、1・5倍、1・8倍、2倍、3倍、3・2倍、4倍、5倍など仕様も様々で、これも分かりにくさを生んでしまう恐れがあることから、メーカー団体の日本家庭紙工業会では、ある程度の規格、表現の統一を検討する動きも出てきている。
いずれにしても、新たな需要を顕在化し、価値向上の動きも見られる家庭紙市場が、今後どのようなアプローチで進化を遂げるのか。ここ1、2年の各社の動きから目が離せなさそうだ。
(詳細は「日用品化粧品新聞」7月1日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)