【夏季特別号2025】上半期総括・下期へ向けた拡大の可能性

各分野における値上げの影響から、生活防衛意識が一段と強まる中で、日用品・化粧品市場も様々な要因から今後を楽観視できない状況が続いている。商品価格に限らず、事業活動に関わるあらゆるコストが上昇し、各社はその打開策を模索している。2025年も折り返しから1カ月を過ぎ、政治や経済を始めとして国内外に多数の課題を抱え、先行き不透明な状況は今後も続きそうな気配だ。
主要各社の決算を見る限り、一部企業で業績回復の兆しが見られるものの、その他の多くは特にメーカーについては厳しさを含んだ、あるいは先々に課題の残る結果となったことは否めない。ただし、複数の企業で「稼ぐ力」をテーマに挙げ、収益力の向上、売上高と利益の源を追求していく動きが見られるようになったのは心強い。いわゆる買い控えも徐々に解消する傾向が見られる。
それを表すように、今年前半におけるトイレタリー市場は、概ね前年実績を上回った。もちろん値上げの効果もあったが、少なくともコロナ禍による影響はほぼ払拭されつつある。主要なカテゴリーを前年比で見ると、ハミガキは5%増、衣料用洗剤は7%増、シャンプー4%増、ボディソープ4%増と、軒並み拡大傾向にある。前年を割って推移しているカテゴリーは少数で、それらは特有の理由によるところが大きく、全体的な傾向としては、金額面では伸長しつつも以前のような水準に戻り切れていない部数量面をいかに伸ばしていくかが今後の動向を左右しそうだ。
少子高齢化に加えて国内人口減少が将来にわたって続いていくことが確実なところで、消費量を増やしていくことの難しさは周知の通りだが、唯一の解決策とも言われる高付加価値化をどれだけ進めることができるか、関係者の期待はこの一点に集約されていると言える。本質的な機能・性能を極限まで高めた商品、複数の機能を兼ね備えた商品、より大型・大容量でコストパフォーマンスに優れた詰め替え用商品、人気キャラクターを起用したコラボ商品、それまで無かった新たな提案をもたらす商品など、要は従来通りの価値では満足しない生活者が何を求めるか、適格かつ柔軟に対応できる商品こそが市場で支持されていくことになるのだろう。
また、当初の予想通りといえるが、訪日外国人の増加、すなわちインバウンド商品の拡大は、以前のレベルを凌駕して拡大する傾向にある。政府によると、6月の訪日外客数は約338万人、前年同月比7・6%増となった。1~6月累計では約2125万人で前年を370万人以上上回るというハイペースぶりに、年間4000万人を超えることが確実視されている。国内人口の3分の1相当の人が日本国内で過ごしたわけで、これが消費に与えるインパクトは大きい。最近では、近年の猛暑に合わせて数多く発売されている冷却剤などが訪日客にも人気だという。土産需要に加えて、滞在中に必要な最寄り品の販売を強化する小売店なども当然のように増えている。
多様化する需要を取りこぼすことなく着実に獲得していくことに加え、他の業界、他のエリア、海外諸国などに販路を求める動きも進んできた。成否はそれぞれだが、じっとしていては勝機が見いだせないという機運は確実に高まっている。
(詳細は「日用品化粧品新聞」8月1日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)