【ヘアケア市場の現状と今後】激しさ増すブランド間競合

コロナ禍から脱した後の回復傾向から高付加価値化、新提案の商品が相次いだこともあり市場の伸びと活性化が期待されるシャンプー・コンディショナーなどを中心としたヘアケア市場。パーソナルケア志向が一段と強まる中で消費者ニーズは多様化する一方、大きなヒットを飛ばすブランドも出始め、更に活況へと向かいそうだ。
経済産業省による今年1~6月の出荷統計を見ると、前年同期比でシャンプーの個数は13%ほど減少、金額は前年並みで推移している。またヘアリンスは個数1・5%減、金額1・9%増、ヘアトリートメントは個数2・6%増、金額2・3%増となった。一見すると伸び悩んでいるように映るが、特にシャンプーついてここまで個数と金額の伸び率が乖離しているのは「メジャーなブランドを中心とする詰替用商品の増加。中でも大容量タイプの投入が相次いでおり、これが個数の減少を招いている」と、メーカー担当者は分析する。また「価格改定も引き続き継続して行われており、合わせて高付加価値化に伴う単価アップもあって、金額面ではさほど減少していないのでは」と言う。
近年は新たな切り口の提案も相次いで行われているが、その意味で代表的な存在と位置付けられているブランドが「YOLU」(I―ne)。発売から2年で累計販売数2500万個を突破し、23年9月、10月と、ドラッグストア市場のヘアケアブランド別の売り上げシェアで1位を獲得した。以降も高い人気を継続し、一部の店頭では一人当たりの購買個数を制限する動きが見られたほどで、更に今後はナイトケアビューティーブランドとしての位置付けを強固にするため、ヘアケアと共にヒット中のボディソープに加え、入浴剤やボディミルクも発売する計画で、シリーズ全体での売り場構築、売り上げアップを進めている。
一方、主要なドラッグストアなどで品ぞろえの強化を図るプライベートブランドも増加の一途で、ユーザーへの提案、取り込みを着実に進めている。ブランドスイッチが激しいとされる市場の中で、競争は今後も激化しそうだ。
加えて、スキンケアなどで注目される敏感肌対応がヘアケアの分野でも幅を広げそうだ。いわゆる無添加、敏感低刺激市場も成長途上にあり、使用感や仕上がりなど一部のネガティブなイメージを払拭することで、更に成長の余地があると見られる。
大手メーカーも様々な商品と施策を打ち出している。花王は、主力の「エッセンシャル」についてリブランディングを実施中で、このほどベーシックシリーズをリニューアルし強化を図った。また、ヘアケア事業変革の一環として投入したハイプレミアムブランド「メルト」に続く新ブランドの発売を予定している。
市場シェアで上位の常連にある「ラックス」(ユニリーバ)、「パンテーン」(P&G)、「TSUBAKI」(ファイントゥデイ)、「いち髪」「ディアボーテHIMAWARI」(クラシエ)、「ジュレーム」(コーセーコスメポート)など、メガブランドも間断無く施策を打ち出すことで、従来以上の存在感を示していきたい考えだ。