【卸売業】”新たな”取り組みに活路見出す
新規商材、物流効率化など積極的な提案アフターコロナ時代が進むと共に、それまで売れていた商品が売れなくなり、売れなかった物が売れ始める。しかし、事前の見込みが必ずしもその通りに行くとは限らず、加えて様々な社会環境の変化、課題を解決していく役割も含めて、卸売業の存在が不可欠なのは言うまでもない。依然として社会的な認知度が高いとは言えない業種だが、規模や方向性によるすみ分けが進む中で、着実に力をつけてきた企業も少なくない。
日用品・化粧品を中心とする業界の卸売業では、売上規模、業容の点でPALTAC、あらたの2大卸が抜きん出ているのは周知の通り。直近の決算でも増収増益を継続しており、更に次の成長へ向けた計画も打ち出している。伸び続ける要因は常に新たなことにチャレンジしていく意欲と行動力によるものと、周囲の評価は高い。
グループ化により事業の推進力を高め、連携の強化を進めるJ―NET、J―NET中央、サプリコなども、独自の手法で卸売業としての役割を果たし、ひいては事業存続と成長へ向けた取り組みを図っている。このうちサプリコは「売る物を変え、売り先を変え、売り方を変える」ことを標ぼうして、その具現化のため活発な活動に暇がない。各グループの傘下にある単独企業も、それぞれの立場や考え方に基づき事業を展開中だ。日用品・化粧品に限らず、薬系と呼ばれる大木、ピップ、更に家庭用品の分野では全国家庭用品卸商業協同組合に加盟する各地の地域卸も、決して楽観視できない社会環境下で踏ん張りを見せる。
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規模や手法は違えども、共通の課題は多い。キーワードは“新たな”ということになろうか。PALTACの例を引くと、売り上げ増の要因の一つは新規商材の取り扱い、あるいは、新規仕入先メーカーの拡大ということになる。同社のみならず、得意先からの要請に基づいたり、独自開発して提案を進めたりしている商品の数は卸売業の中でも目立ってきている。寡占化した商品分野でも、何らかの差別性があれば取り扱い、あるいは他の業界との垣根を超えた商品の取り扱いも、今は珍しくなくなった。また、あらたは今年3月、自身では初となる全社的な総合展示会を都内で開いた。自社のオリジナルブランドや独自性の高い様々な機能の紹介にもスペースを広く割き、大勢の来場者にアピールしてみせた。
ある地域卸のトップは「得意先からの要望は重要だが、その得意先の現状を常に理解し、こちらから適切かつ的確な商品やサービスを、提案していくことが必要となってきた。これまでも様々な企画を提案してきたが、まだまだできることがあるはず」と語る。花王の代行店も含め、小売業以外のノンリテールと呼ばれる売り先を求めた動きも一層目立ってきた。これも新規の取り組み一貫と言えるが、まだまだ開拓を進める必要がありそうだ。
その他にも多くの課題を抱える卸売業だが、周囲の変化に合わせて自らを変化させてきた企業は、活躍の場を広げてきた歴史がある。いわば、いつの時代も“新たな”知恵と行動が必要な業種といえるだろう。
(詳細は「日用品化粧品新聞」11月4日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)