【THE決算2025】引き続き”稼ぐ力”の向上に注力

化粧品・日用品業界を含む各産業界で第2四半期または第3四半期の決算が相次ぎ発表されている。全般的に業績の上方修正や過去最高益の更新が見られるが、個々にはそれぞれに課題を抱えながら事業を進めている様子がうかがえ、時にそれが業績に色濃く反映しているようなケースも散見される。主要企業の業績を追ってみる。
花王の第3四半期は、それまで抱えてきた様々な課題への対応を念頭に、あらゆる施策に取り組み、企業としての本分の一つとも言える「稼ぐ力」の向上に注力してきた成果と言える。売上高前年比3・5%増に対して、営業利益は13%以上の増加。ごく一部のカテゴリーでマイナスの部分もあるが、概ね成長性を維持。プレミアムヘアケアなど高付加価値商品がヒットし、化粧品も国内外で支持を高め、同時に進めていた構造改革の効果も相まって、利益率を大きく改善している。
オーラルヘルスケア事業への更なる注力、海外でのビジネス力強化が注目されているライオンも、当初計画を上回るペースで改善を進め、第3四半期に成果の一端がうかがえる数字を残した。構造改革に伴い一部ブランドの売却などを進めていることで、売上高は1・3%増ながら、営業利益、四半期利益は共に6割ほどの増加を果たした。
トピックスとして、花王もライオンも現時点までのところ衣料用洗剤などファブリックケア分野の伸びが明確になっているのは特筆すべき点。寡占化、競争激化が進む中でも、各プレーヤーが互いに収益を確保できる仕組みを確立しつつあることがうかがえる。
日用品関連では、アース製薬が第3四半期決算で、売上高6・0%増に対して営業利益、経常利益共に2割を超える増加を示した。値上げによる上乗せもありながら、一方で粗利率の改善、販管費の抑制を進めるなどして実績を残した。
またエステーの第2四半期決算は、ペットケア事業の拡大や主力品の着実な成長で売上高を維持しつつ、全社挙げて取り組む改善策の効果が少しずつ表れ始め、営業利益は約5割増、経常利益も3割を超えた。今後、先の大阪・関西万博の会場で発表したパソナとの業務提携による共創プロジェクトにも期待が寄せられるなど、着実に体質改善が進んでいる。
反面、大手化粧品メーカーは厳しい状況が続いている。資生堂は、依然として中国事業、トラベルリテール事業、米州を始めとする「ドランクエレファント」などで苦戦。日本国内の売上高は0・1%増で、当期の四半期損失は約440億円に上った。新たに策定した2030年までの中期経営戦略に基づく今後の挽回に期待が集まる。
コーセーは、来期からの持ち株会社制度への移行を前に第3四半期決算を発表。日本国内で堅調な伸びを見せたことで売上高は0・7%増となったが、新たな連結対象会社の管理費上乗せ、タルト社でのマーケティングや物流コストの増加で営業利益は約28%減だった。卸流通を活用するコスメタリー事業は、競争環境の厳しさから2・1%減収。
卸売業は、PALTAC、あらたの大手2社の第2四半期決算を見る限り、値上げの一巡や取り扱い商品の拡大、新規帳合の獲得などで売り上げ増を確保しながらも、従前からの人件費、物流費、その他コストの上昇が想定を超えているレベルで、利益確保への改善策を進めようとしている。
(詳細は「日用品化粧品新聞」11月17日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)



