【世界に発信するブランド旗艦店の仕掛け/コーセー】パーソナルな顧客体験追求

コーセー初の直営店「Maison KOSE銀座」
2019年12月にオープンした、Maison KOSE銀座のコンセプトは“Find Your Own Beauty”。コーセー初の直営店として展開ブランドを横断的に取りそろえ、ユーザー自身に新しい美の発見をしてもらうという目的の下、多彩な発信を行っている。
創業80周年に向けて更なる成長ステージを目指した中長期ビジョン「VISION2026」では、「デジタルを活用したパーソナルな顧客体験の追求」を掲げており、Maison KOSE銀座はその一端を担っている存在だ。開設当初から、複雑なデザインも手軽に実現するネイルプリンターや肌状態を数値で示す分析装置(現在はサービス提供終了)を導入するなど、最先端研究を基にした多彩なビューティアトラクションをそろえ、化粧品に関連した様々な“ワクワク”が体験できる場として注目を集めてきた。
今年8月には、コーセー研究所が監修した3Dの高速追従プロジェクションマッピング技術を活用した最先端のメイクシミュレーター「COLOR MACHINE」を設置した。非接触で無数のカラーパターンを試してもらいながら理想のメイクの実現や似合うメイクの提案を行うという。アイシャドウ、チーク、リップによるメイクが直接体験者の顔に立体的に追従して投影されるため、画面上では味わえないリアルなカラーメイク体験が可能。顔の動きや表情の変化にもリアルタイムで対応し、自分の肌に直接メイクを施しているかのような感覚が味わえ、カラーの組み合わせは8000種類以上にもなる。ビューティコンサルタントによるカウンセリング力も大きな強みであり、豊富な知識を基にしてその人に合ったパーソナルカラーを診断し、髪色、洋服、なりたい印象に合わせたアイテム探しをサポートしている。
マーケティング戦略部の杉崎洋グループマネージャーは「直営店ならではの発信、体験価値を重視して、たくさんのブランドがある中で、自分に合うものを見つけてもらいたいという思いから生まれた施設です。商品を選びやすい形を模索し、お客さまやスタッフの反応を基に試行錯誤する中で、オープン当初のカテゴリーごとの陳列からブランドごとの陳列へと売り場を変更しましたが、ビューティコンサルタントによる接客はブランド横断で行っています。いろいろなことを試せる場としてお客さまとの貴重な接点の場となり、売り場での滞在時間などの知見も蓄積することができています」と明かす。体験型ビューティアトラクションについては「エンターテイメントの要素を取り入れたものが非常に充実してきましたが、常にアップデートしていき、違う形での活用方法も考えていければ。新しいコンテンツをどうやってつくって、試していくかは常に課題となっていますが、今後も充実したアトラクションを用意していきたいと思います」と意気込む。
売り場づくりの事例提供も
雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトの内容を紹介するコーナー及び使用済みプラスチック容器回収ボックスを設置したり、不要になったメイクアップ化粧品をアップサイクルした絵具でアート体験ができる「GREEN ATELIER」のスペースを設けたりと、サステナブルな取り組みを発信する機会も多い同施設。「雪肌精」のグローバルミューズであるフィギュアスケートの羽生結弦選手の衣装、靴などの特別展示を実施したことも話題となるなど、様々な形で同社の存在をアピールする場になっているようだ。
「コロナ禍でいろいろな制限もありましたが、最近では人出が増え、アクティブな活動、体験がしたい、アドバイスを受けたいというニーズも大きくなり、接客回数も増加しています。それをすくい上げつつ、商品を買ってもらい売り上げを上げるというよりは、パーソナルな顧客体験を通じてコーセーの世界観に触れてもらい、親しみを持ってもらうことにつなげたいと思っています。また、売り場づくりでは良い事例、悪い事例を流通業へ提供していくことも考えています。社内からは、施設を活用したいという声も増えてきました。埋もれてしまっているニュースを発信し、新たなカウンセリングツールなども試していける場として、もっと積極的に活用していければ。年齢や性別を問わず、コスメが好きな人、興味がある人に魅力が伝わってきている手応えもあります」(杉崎グループマネージャー)と、今後もどんな提案が見られるか期待が集まる。
(詳細は「日用品化粧品新聞」10月17日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)