【世界に発信するブランド旗艦店の仕掛け/ポーラ】顧客の信頼生み出す空間

五感で体感できる「美」を発信する「ポーラ ギンザ」
2009年に80周年を迎えたポーラの新たなシンボルとして、東京・銀座に竣工した「新ポーラ銀座ビル」。地上12階、地下2階に及ぶ「美容」「美術」「美食」をテーマとした複合施設の1階、地下1階で、旗艦店「ポーラ ギンザ」は様々なニーズを抱えた来店客を出迎える。他フロアのアートギャラリー、レストランなどと共に五感で体感できる「美」を発信することで、顧客とポーラとの結びつきを強める役割を担っている。
オープン当初は、全国に展開する「ポーラ ザ ビューティー」の1店舗としてサービスを提供していたが、20年に「ポーラ ギンザ」と名称を変更し、ポーラブランドの旗艦店としてスタート。「B.A」「APEX」など各ブランドの世界観や商品の体験、エステサロンでの施術を通じて、様々な魅力に触れることができる。コロナ禍において変化する顧客とのコミュニケーションにおいては、新コンテンツの作成やテストマーケティングの場としての機能も果たしているという。店舗ブランディングを担うPS事業部 ギンザチームの鎌田梓氏は「以前と変わらずご来店される方もいらっしゃいますが、オンラインカウンセリングや電話での接客など、新たな様式でのお付き合いをするケースも出てきました。お手紙でのやりとりを希望される方もいらっしゃいますし、お客様一人ひとりに合ったコミュニケーションの形をとっています」と、柔軟な対応で顧客に寄り添う姿勢を示す。
「ポーラ ギンザ」から始まった取り組みが全国に広がる事例も増えており、「APEX」の「肌プランニング」関連のイベントもその一つ。自分の肌をあらためて知る肌分析をメインに、五感を通じてより深く自分自身とも向き合えるよう、視覚や嗅覚を刺激する仕掛けを組み合わせた。今夏は「POLA SKIN CARE BAR of APEX ポーラの肌分析体験コース」と題し、APEXの肌分析体験と分析結果に基づくケアの提案、更に8種類の紅茶の中から、自分の感性で好きな香りを選ぶティーセレクトなどのコンテンツを用意。リラックスした雰囲気の中で肌と向き合うことで、楽しみながらブランドを理解する機会にもなる本イベントには、期間中200人以上の予約があったという。
また、年齢(AGE)がもたらす経験を未来の可能性に転換する能力(BILITY)は全ての人に備わっているという、エイジングに対するネガティブな意識を変えるB.Aの新たなメッセージ「AGEBILITY(エイジビリティ)」を体感するイベント「Draw Your AGEBILITY at POLA GINZA」では、参加者がシンボルであるダリアの花びら1枚1枚に「夢」や「未来への挑戦」を刻み、店内の柱にペーパーダリアの大輪を咲かせる取り組みを行った。終了後のアンケートでは「もっと進化したい」「もっと挑戦していきたい」などといったポジティブなメッセージが寄せられたという。
一人ひとりがポーラを体現
旗艦店として、美容スタッフの顧客との関わり方もより深いものが求められている。店舗責任者の青木恵美氏は「お客様のご希望やニーズに応えるのはもちろんですが、言葉にはならない本心や『こうありたい、こうしたい』という意欲まで引き出せるように、スタッフそれぞれが工夫をしています。何かしらのニーズをお持ちでも『話しづらい、聞きにくい』という方もいらっしゃるので、どうしたらお話しいただけるかという着眼点を持って接することで、旗艦店に訪れる価値を感じていただき、お帰りになった後もポーラを思い出していただけるように努めています」と、顧客からの信頼が生まれる空間づくりの秘訣について明かす。
店頭には全ブランドの商品が並ぶ。BC(ビューティーコーディネーター)は確かな美容知識とカウンセリング力で接客を行う。しかし、求められているのは「化粧品」ではなく「ポーラ」そのものなのだという。鎌田氏は「ポーラなら安心して任せられる信頼感、日本ブランドとしての本質感や感性の部分でお客様とつながることが求められていると感じます。私たち一人ひとりがポーラを体現しているという責任があります。今後も美容サービスに留まらず、人生の楽しみ方や体験を通じた新たな出会いを提供できるコンテンツであり、スタッフであり、空間でありたいと考えています」と旗艦店の役割を捉えている。
路面店としては10月で13周年を迎えるが、旗艦店としては2年と歴史はまだ浅い「ポーラ ギンザ」。しかしながら、社内を牽引しながら様々な「美」を発信していく力は、ポーラブランドの顔として強固な存在感を放っている。
(詳細は「日用品化粧品新聞」10月17日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)