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【特別インタビュー/BCLカンパニー・大村和重カンパニーエグゼクティブプレジデント】社長就任1年を経て見えた舵取りの方向性

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【特別インタビュー/BCLカンパニー・大村和重カンパニーエグゼクティブプレジデント】社長就任1年を経て見えた舵取りの方向性

 事業部の壁無くし社員一人ひとりの意識高める環境へ

 シートマスクを中心とした時短コスメシリーズ「サボリーノ」のヒットで、市場での存在感を急速に高めるスタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー。個性的な価値を持つ商品展開や、百貨店ブランドの直営店運営など、多様な顧客に向けたアプローチ及び取り組みは、業界内外で高い評価を得ている。更に、本紙の今回の特集でもあるSDGsついても、商品開発や社会貢献など多岐にわたって積極的な姿勢を見せている。昨年6月、社長職に当たる現職に就任した大村和重カンパニーエグゼクティブプレジデントに、企業発展に向けた施策や今後の方向性、更にはSDGsへの活動や考え方について語ってもらった。

 ――まず社長就任の件で話をお聞きします。就任当時や、この一年の状況を振り返っていかがですか。
 「私自身、国内の営業や宣伝販促などにこれまで深く携わっており、就任前から社内の課題やそれを改善するための施策などは、おおよそ見えていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で様々なものが影響を受け、化粧品市場も、発展へのスピードが鈍化しました。そういったこともあって、新しい挑戦や変わることへの恐れのようなものが社内にあったように感じます。しかし、それではいつまで経っても良い方向に事は進みません。私は以前から、トップダウンよりも、社員一人ひとりが自ら考えて全体の流れをつくっていくことが重要だと考えていました。それを踏まえ、組織体や社員の意識を少しずつ変えていったという状況です」
 ――具体的にはどういったことを変えたのでしょう。
 「簡単に言うと、事業部の壁を無くしました。今まで国内、海外、直営店の三つの事業部がありました。それぞれ単独で動いていた面がありましたが、国内と海外は完全に切り離せませんし、直営店とセルフも切り離せません。ECの台頭もあります。そこで、BtoBとBtoCを基本に、3年後、5年後に向けての組織体に一新しました」
 ――新たに立ち上げた部署もあるようですね。
 「マーケティング本部を新たに設置しました。マーケティング戦略は、当社として非常に重視していますが、これまで専門の部署は存在していませんでした。新しいことにチャレンジするという意味でも、この部署は非常に大きな役割を担っていくことになりますし、ぜひ機能させていきたいと考えています。それと課題の一つでもあるECも、現在は専門部署を立ち上げたばかりで、手探りで進めている状況です。しかし、それでは市場の変化に追い付けませんので、今後人材面でのテコ入れなども視野に入れています」
 ――部門ごとの役割を明確にする狙いがうかがえます。
 「今回の組織変更では、各部門の担当者に権限を与え、ある程度責任を持って物事を決められる環境を整えました。先ほどもお話ししたように、上から言われたからではなく、社員一人ひとりが物事を分析、検討し、部署ごとにミーティングを重ねて進めることが重要という考えからです。新型コロナウイルスによるマイナスの影響は様々な面でありましたが、新しい風土を根付かせるには、良いタイミングだったのかもしれません」
 ――海外製品への対策や海外での販売施策などはいかがでしょう。
 「国内では、生活者意識やトレンドの変化スピードが速くなっている中、大ヒットと呼ばれるような商品は出にくくなっています。一方で、韓国系コスメのように、短いサイクルで人気を得るような商品は目立ってきました。そういった状況を背景に、我々としてもこれまで以上に輸入の商品と勝負する必要が出てきました。海外についても、10年以上前から事業を進めていますが、以前は、日本で売れた商品を海外で販売するという流れだったものが、勝つためには、それぞれの国にローカライズした施策が必要になってきています。今はそれに向け、準備を進めているところです」
  ――次に商品面での話をお聞きします。御社といえば人気ブランドの「サボリーノ」がありますが、ヒットの要因は改めて何だったのでしょうか。
 「『サボリーノ』はたとえ成熟したと思われる市場であっても、新しい提案で市場を拡大した好例だと思います。『朝用』という切り口で、そのカテゴリーのナンバーワンを取り、それを実現したことで、市場シェアを安定して確保できています。化粧品は美しくなるという機能や訴求は当たり前で、生活を豊かにするプラスアルファの提案が無いと差別化にはつながりません。そういった付加価値の商品をつくり、宣伝や営業を通してその価値を魅力的に伝える。特別なことではありませんが、それを具現化したことでヒットにつながったと捉えています」
  SDGsも商品面、社内外での活動面で積極的に推進。インパクトの強いアプローチで、生活者にも環境負荷低減への実感を与える。

 商品通じたSDGsの展開も追求

 ――今回の本紙特集でもありますSDGsについては、御社も幅広く活動しています。取り組み内容を聞かせてください。
 「以前から様々な取り組みを行ってきました。SDGsという言葉が生まれる前から行ってきたものが、結果的にSDGsにはまっていた形です。当社の工場に咲く桜の散った花びらなど、本来廃棄してしまうものから抽出したエキスを原料として使ったり、太陽光発電や風力発電などを取り入れたり、また、近隣の学校を工場見学に招いたりしてきました。最近は、それを一覧表にまとめたばかりです。活動を行うだけでなく、当社の企業理念などを知ってもらうためにも、具体的な内容を今後広く発信していこうと考えています」
 ――SDGsに関連した商品の話も御社は豊富です。まず、今年3月にスタートした新形態ショップ「サステナプラス」について。
 「『サステナプラス』は、当社のベキュアハニー直営店5店舗において、海外から輸入した5ブランドをコーナー化して販売しているものです。オーガニック認証を国内で取ったり、生分解性に優れた容器を開発したりするのは手間と時間、コストが非常に掛かりますので、SDGsの取り組みが進むヨーロッパの商品を直接輸入して販売しています。一つひとつのブランドの知名度はあまり高くないかもしれませんが、サステナブル、エシカル、フェムテックなどをキーワードに、当社が共感できるブランドをセレクトしました。直営店で販売する当社の『ベキュアハニー』はありがたいことにファンも付いてくれていますが、それとは違ったサステナブルの世界観を知ってもらうことで、新しいファンをつくりたいと思っています。直営店の中に、二つのショップがあるということではなく、二つの切り口があるという位置付けです」
 ――「サボリーノ」でも、今年2月、スーパーやドラッグストア、バラエティーショップなど6社と協業し、それぞれにオリジナルの商品を発売しました。これもSDGsの側面がありますね。
  「香りとパッケージを6社様それぞれの限定品として発売したものですが、通常の『サボリーノ』と異なり、容器の包装を4層フィルムから3層にしてプラスチックの量を削減しました。量を減らして破れてはいけないので、どこまでのラインが適正なのか判断するには苦労しましたね。それと、本来破棄されるフルーツのエキスを原料に使用しました。どの企業様も販売実績が良く、一安心しているところですが、この結果を得て、来年の春には次の展開を予定しています」
 ――その6社のうち4社がドラッグストアです。御社のドラッグストアでの存在感も高まっているのではないでしょうか。
 「これまでグループ企業でもあるプラザ始めバラエティーショップでの店頭販促には比較的力を入れてきましたが、売り上げや注目度が高まるドラッグストアでの展開も重要になっています。ドラッグストアでも、可愛いらしいデザインだけで商品が売れる時代は終わっています。一歩先に行くとなると“時短”の『サボリーノ』にサステナブルの価値が付いている、しかも6社同時に違う香りとパッケージで、となれば、業界内だけでなく消費者にも強いインパクトを与えられます。ただ、今の消費者は、サステナブルの商品だから買った、というよりも、買ってみたら地球環境に貢献していたという部分で、今回の『サボリーノ』のようなサステナブルの価値を身近に感じてくれたのではないでしょうか」
  新たな市場を構築し、ヒットを続ける「サボリーノ」に新展開。直営店やECも、新ブランド投入や販促強化で更なる価値を提案。
 ――昨年8月には、環境と肌に優しい「クリーンビューティー」を価値として打ち出したブランド「タヴィア」を発売しました。御社の得意なリアル店舗ではなく、EC限定での展開ですね。

 「欧米では、クリーンビューティーがトレンドとして見られています。日本にトレンドとして入って来るのは2年、3年先と言われる中、クリーンビューティーの入門シリーズとして、いち早く展開を始めました。リアル店舗ではなく、あえてECでじっくりと成長させていきたいと考えています。クリーンビューティーを訴求するブランドは他にもいくつか出ていますが、どれも大きな実績をまだ得ていないように見受けます。ただ、トレンドの流れは一気に変わりますので、当社としても今は知見を蓄積している段階です」
  ――SDGsの商品では海外向けも強化されるとか。考えてみると非常に幅広いラインアップですね。
 「2018年デビューの『ハニーロア』は、直営店9店舗で現在展開しています。このブランドは、オーガニックやサステナブルの視点をかなり意識してつくりました。これから中国での販売も広げていこうと考えています。当社は、プチプラのブランドもあり、百貨店向けブランドもあり、海外ブランドもあり、そしてオーガニック、サステナブルな商品もあり、と様々なカテゴリーを持っているので、それぞれ違う役割を持たせたい。今後は、SDGsをどういう形で追求し、どう訴求していくのか、バランスの見極めがより一層大事になってくると思っています」
 ――SDGsはもはや商品戦略でも欠かせないものになりつつあります。
 「小売業様の意識も変化しているようです。昨年まではSDGsというだけで、商談での採用率も高かったのですが、最近では、どういうメリットがあって、どういう形で自分たちの会社に還元できるのかを、小売業様も追求し始めました。先ほどお伝えした6社様の『サボリーノ』の展開は、そういった考えを形にしたものです。また、当社はTBSグループということもあってか、各種活動の告知の要望などが少しずつ増えてきました。小売業様単体ではできることも限られてきますので、メーカーとの協力体制への意識は強くなっているのではないでしょうか」
 ――グループ会社のCPコスメティクスもSDGsの活動には積極的です。
 「CPコスメティクスも、新しい取り組みがあります。これまで女性支援を打ち出しながらも、関連する団体への寄付はあまり行ってきませんでした。今年5月には、ピンクリボン運動を支援するに当たり、公益財団法人日本対がん協会に寄付を行いました。また、自社工場で無農薬栽培した成分を配合したボディケアシリーズの『ラフレンディー ボタニカル』の売り上げの一部を、公益財団法人ふじのくに未来財団に寄付し、環境保全へと役立てています。更に、ミス・ワールド・ジャパンの応援も行っています。これは、日本の代表出場者の方にスキンケアやメイクの部分でサポートしているものです。今後は、サロンも含めて活動の幅を広めていきたいと思っています。CPコスメティクスも、私の就任と同じタイミングで43歳の若い社長に変わりました。新しい取り組みをしたいという思いが、スピード感のある取り組みに反映されています」
  ――最後に、経営の舵取り役として、改めてここまでの状況や今後の方向性を聞かせてください。
 「意図していたことが社内に伝わりきっていない面もあるなど、まだまだ道半ばの状況です。これからは、考えが浸透するのを待つのではなく、その途中でも自ら動いて変えていく必要があると思っています。土台をしっかり維持しつつ、変えるべきものをスピード感を持って変えていく。1年前に力を入れようと検討したプロジェクトやサービスが、今では既に成熟というか、伸びの上限が見えてしまうものも珍しくありません。全体像はそのまま変えずとも、細かなものは適宜変えていかないと時代のスピードに追い付けません。そのためには、私からの言葉ではなく、ある程度現場の判断で一人ひとりがフレキシブルに対応していってほしいと思っています」

 (詳細は「日用品化粧品新聞」9月12日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)
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