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【新社長インタビュー】ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング/ジョイ・ホー氏、サステナブルなビジネスのグローバルリーダーへ

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【新社長インタビュー】ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング/ジョイ・ホー氏、サステナブルなビジネスのグローバルリーダーへ

 社会と地球に良い変化を起こしていくことを目指す

 今年7月にユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの新社長として就任したジョイ・ホー氏。台湾出身で各地での様々な経験を踏まえ、パーパス経営に基づく日本市場での地位向上を目指して舵取りに当たる。市場への想いと今後の方向性を聞いた。

 ――まずは、自己紹介からお願いします。
 「私は、台湾・台北の隣にある街で生まれ、大学卒業後、これまで30年近くにわたり三つの企業でキャリアを積んできました。最初はアルコール飲料を扱うDiageo社でブランドマーケティングを3年間務め、1997年にユニリーバに入社、バンコク、シンガポール、上海などに赴任しマーケティングや営業の部門で様々な役割を担いました。リプトン(ペットボトル入り飲料)のブランドマーケターとしては、3カ月に一度は上海から日本に出張していました。その後、2009年にユニリーバを退職し、GSK社に転職し、台湾事業のジェネラルマネジャー、その後再び上海でグレーターチャイナ・コマーシャルエクセレンスを担当していました。2017年、再びユニリーバに入社し、台湾・香港のマネージングダイレクターになりました。そして今年7月、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの代表取締役社長に就任しました」
 ――再度ユニリーバに戻った理由は何でしょう。
 「ユニリーバは『サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に』という、大きなパーパスを持つブランドと人の企業です。ビジネスパーソンの仕事は、売り上げや市場シェア、利益を上げ、より多くの価値を創造することです。しかし、ユニリーバでは、業績だけでなく、人々や社会、地球に良い変化を起こしていくことを大切にしています。私をユニリーバに戻したのは、まさにこのパーパスと言えます。ユニリーバは、事業規模を活用して、より良い未来への変化を広げていくことにコミットしています。イクイティ、ダイバーシティ&インクルージョン(=EDI多様性が尊重され、生かされ、誰もが公平に扱われること)戦略を通じて、一人ひとりが持つ可能性を最大限引き出し、社会と地球に良い変化を起こしていくことを目指します。そうした企業のリーダーとして組織を率いていけることを誇りに思い、うれしく感じています」
  ――社長に就任してどんな感想を持ちましたか。また、日本市場の印象は。
 「ユニリーバが展開する多くの市場の中で、日本は私にとって最もプライオリティの高い市場、働くことを夢見た場所でした。これから社員やパートナーの皆様と共に、日本の消費者の暮らしや流通環境に貢献していけることを誇りに思います。台湾にとって日本は近しく親しみのある市場です。『メイド・イン・ジャパン』は近隣市場の消費者にとって、とても有名で人気があります。製品一つひとつに、卓越した創造性、インスピレーション、クラフトマンシップ(ものづくりの技術)、きめ細やかなサービスが見てとれるからです。その影響力の大きさを忘れず、より最適化したアプローチで、世界における日本の存在感をより一層、高めていくことができると考えています」
 ――過去と現在で、日本市場に対する印象は変わりましたか。
 「社長就任後、日本市場に対する憧れや尊敬の念は強くなる一方です。この市場にはまだ十分に引き出せていない力があります。より機敏に、より柔軟に対応することで、その潜在力を引き出せると信じています。その最初の一歩は、地域や世界に対する日本の重要性と影響力を過小評価しないことです。かつての勤務地の市場は、変化の激しい世界で成功し続けるため、非常に高い機敏性と柔軟性を発揮していました。例えば台湾では、プロモーションをたった1日で変更できます。中国では、デジタル技術や非常に高度なEコマース・プラットフォームを通じて、日々、新しい消費者体験を提供しています。日本の流通には長年受け継がれてきた独自のエコシステムがありますが、改めてプロセスを見直し、デジタル化や簡素化を進めることで、更に成長を加速できるのではないでしょうか」

 世界における日本の存在感をより一層高める

 ――ユニリーバ・ジャパンとしてのビジョン、優先順位、重点項目、また、日本で実現したいことは何でしょう。
 「ユニリーバのグローバルビジョンは『サステナブルなビジネスのグローバルリーダーとなる』ことです。ユニリーバ・ジャパンのビジョンは『日本においてサステナブルなビジネスのリーダーとなる』ことです。ここでは『4G Growth』、継続的な成長、競争力のある成長、利益ある成長、責任ある成長の四つの成長を目指します。優れた業績とサステナビリティの両方を追求することで、日本でサステナブルなビジネスのリーダーとなり、日本から世界へも良い変化を広げていきたいと考えています」
 ――そのために重点的に取り組んでいくことは。
 「『4つのP』、特に最優先分野は『People』(人)です。企業だけでなく社員一人ひとりが自分のパーパスを持ち寄って仕事をすることで、ユニリーバ・ジャパンはよりカラフルでパワフルな企業、人々が一緒に働きたいと思う企業となり、ビジョンを達成できるようになるでしょう。二つ目は『Process』(プロセス)です。日本にも、ユニリーバ・ジャパンにも、独自の強みが数多くあります。プロセスをより簡素化、標準化し、機敏性や柔軟性を高めることで、日本の消費者のニーズや市場の変化により速く対応し、成長できると考えています。三つ目は『Portfolio』(製品)です。現在のユニリーバ・ジャパンのポートフォリオは、マス・プレミアムが中心です。今後、プレミアムへと徐々に変えていく必要があります。四つ目は『Place』(市場・販路)です。日本には中国や台湾より多くの小売業があります。パートナーとの効果的な協業を深化させていきたいと考えています。年末までに七つの営業所を拠点としてお取引先様を訪問する予定です。市場や販路についてより深く学び、お取引先様と共に消費者の皆様の暮らしを変えていきます」
 ――今後、どんなリーダーを目指したいと考えていますか。また、そのために必要なことは。
 「成長を実現するのは数値目標や評価指標ではありません。以前は、優れたリーダーとは野心的な目標を設定し、追及する人だと思っていましたが、実はそれよりも大切なことがあると気付きました。優れたリーダーとは、素晴らしいビジョンを持ち、意味のある目標を設定し、それを個人のパーパスとモチベーションに結びつける方法を知っている人です。だからこそ、社員が自分らしく活躍できるよう、障壁を取り除くことに力を注ぎます。そして、イクイティ、ダイバーシティ&インクルージョンを非常に重視しています。個人的なことですが、10年ほど前に自分がレズビアンであることを公にしました。自分のキャリアにおいて、ありのままの自分でいるのではなく、社会の期待に応えようとすることで長年多くのエネルギーを無駄にしてきたと思います。カミングアウトしてからは、社内外の多くのビジネスシーンで、LGBTQI+の当事者かどうかに関係なく、いろいろな人が私のところにやってきて自分の考えを話してくれるようになりました。ありのままの自分を見せることで、他の人々がありのままであることを尊重し、いろいろな声に耳を傾けるリーダーとして受け入れられたのだと思っています」
 ――これまでの仕事で得たことを、日本ではどう生かしていきますか。
 「ユニリーバ台湾では昨年、社員の発案で多様性をテーマにしたキャンペーンを展開したところ、主要チャネルで4%近い成長を実現しました。中でもタイアップを実施した小売店様では期間中の売り上げが20%上がり、ショッパーからの評価も高まっています。パーパスがビジネスの成長につながった一例です。日本でも企業、ブランド、そして社員のパーパスを実現しながら成長していきたいと考えています」
 ――競合他社とどのように関わっていきたいと考えますか。
 「市場で健全な『競争』をしつつも『共創』を深めていきたいです。サステナビリティを始め、業界共通の課題については、競合他社を含めた全てのステークホルダーと協力し、より速く、より大きく、より良い変化をもたらしていくことが重要だと認識しています」
 ――「日本から世界へ」ということが期待されています。どのように実現を目指しますか。
 「日本には本当に素晴らしいブランドや商品、サービスがあります。アジア市場、世界市場に対する日本の影響力を過小評価すべきではありません。しかし、日本の魅力は海外へも十分に伝わっているでしょうか。海外市場で何が求められ、どう市場で振る舞うべきかを知らなければ、どんなにブランドや製品、サービスが良くても市場で勝つことはできません。日本と海外との相互理解を深めることで、機会を更に広げ、日本の持つ可能性を解き放つことができると信じています」

 (詳細は「日用品化粧品新聞」10月3日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)

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