【ヘアケア市場】付加価値化進み単価増
次々と新たな価値を提案するアイテムが登場し、激しい競争環境にあるヘアケア市場。うねりやダメージをケアする、指通りの良さを発揮するといった機能面の追求に加え、情緒的価値の発信が必要不可欠になってきており、メーカー各社の多彩な施策も注目されている。
経済産業省の出荷統計によると、2024年1~12月の頭髪用化粧品は個数4・5%減、金額1・4%増で推移した。個数面はやや伸びを欠いたものの、金額はプラスで、高付加価値品が好調に推移している市況が数字に表れた形だ。シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメントのいずれもが、個数の伸びを金額で上回り、単価アップが進んでいる様子がうかがえる。25年に入っても同様の傾向は続いており、シャンプー、ヘアリンスは個数、金額共にプラス推移となっているなど好調ぶりが目立つ。
他カテゴリーと同様に、SNSで話題になり、人気に火がつくケースも増えている。@cosmeによると、商品数の増加と比例するようにヘアケアカテゴリーのクチコミ数は14年度から10年間で2・7倍にも上り、髪の補修、頭皮の保湿といったケアが必要だという考えが浸透し「ヘアケアにかける金額を増やしたい」と考えるユーザーも増加傾向にあるという。若年層を中心に高価格帯アイテム、スペシャルケアアイテムの利用率が高まりを見せていることなども、これを裏付ける流れと言える。
また、スキンケアのようにブランドの世界観を醸成するケースが増えたことも特筆すべき点だ。美容成分を重ねるように補給し、閉じ込めてパックするという“レイヤードパック処方”を採用したコーセーコスメポートの新シリーズ「ジュレーム レイヤード」は“記憶に残る髪”を実現するという情緒的な訴求を強める一品。ブリーチなど髪にハイダメージを与える施術が流行していることを受け、ケアに特化した商品設計を盛り込みつつ“ハイダメージヘアさえもするんと風になびく髪に導く”というアプローチを図るファイントゥデイの「+tmr(プラストゥモロー)ブライトシリーズ」も、機能面、情緒面の双方で価値を発信している。
メーカー担当者は「一昔前はヘアケアは単に汚れを落とすものととらえられていたが、情緒的なアプローチによって差別化を図るケースが増えている。スキンケアと同様に、配合成分への関心も高まり、選択の際の大きな基準になっているようだ」と分析する。 その他にも、幅広い取り組みで市場活性化につなげる施策が目立つ。“ヘアケア事業変革”を進め、ハイプレミアム品の構成率向上を図る花王は8月に「メルト」「ジアンサー」に続くハイプレミアムヘアケアブランド第3弾として「PLAY!ME〈毎日過去最高のわたしを楽しもう〉」をコンセプトにZ世代向けに訴求を強める「MEMEME(ミーミーミー)」を発売、順調に自社のシェアアップ、単価アップにつなげている。
「BOTANIST」「YOLU」によってハイプレミアム市場への注目度アップにつなげたI―neも好調を持続。新ダメージケアライン「BOTANIST SANTAL」、毛先のまとまりとサラサラ感を両立する「YOLUメロウナイトリペア」といった新しい提案を行う。人気ブランドのランクアップ品「ディアボーテHIMAWARI Bloom d,Or(ブルームドール)」も話題となりそうだ。
インバスアイテム以外では、ヘアカラーも活況を呈す。取り置きができ、部分染めにも向いていることからクリームタイプのヘアカラーが圧倒的な人気を誇り、従来のトリートメントからスイッチするだけという手軽さが大きなメリットとなるカラートリートメントも人気上昇中という状況で、高いシェアを誇るダリヤ、ホーユーもこれに対応する提案を進めている。(各社の施策4面~)
(詳細は「日用品化粧品新聞」9月22日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)