【卸売業】値上げ効果と社会の変化の中で更なるサプライチェーン進化へ

サプライチェーンにおける卸売業の役割が大きくなるにつれ、業務の高度化、効率化、あるいは非競争分野での協業化などが加速度を増している。一方で、食品や非食品を含めていまだに相次ぐ値上げの動きなどから生活防衛意識は高止まり、一部のカテゴリーでは数量面での動きが鈍化するなど、厳しい状況が続く。日用品・化粧品・家庭用品の分野は、他の業界に比べ安定感が比較的高いことで定評があるが、決して楽観視できるところではなく、更なる進化が必要となりそうだ。
今年これまでの卸売業のビジネス状況を、最大手PALTACの決算(2025年4~9月期)から見ると、昨年来続く社会的な変化の影響が色濃く表れている印象だ。売上高は4%以上の伸びを見せながらも、様々な面でのコスト増から営業利益はわずかに前年同期を下回った。いわゆる増収減益で上半期は着地したわけだが、数字の多寡はともかく、PALTACに限らず多くの卸売業が同様の傾向にあると見られる。ここには多くの共通する課題が内包されていると言えそうだ。
売り上げの増減は各社の事情にもよるが、プラスの実績を残している卸の多くは、各方面に広がる商品の値上げによる恩恵が小さくないと見られる。単純な値上げだけに頼ることなく、合わせて高付加価値化を果たした商品の取り扱いを増やすことで販売を加速させる効果もあった。
しかし、ある中小卸では「値上げラッシュの中で、あえて逆張りするかたちで、一定の品質を担保した上での価格訴求品、ノンブランド品の扱いを広げ、値上げを余儀なくされた従来商品の代替品として提案する機会を増やした」と言う。店頭価格の上昇を抑えたいという得意先の要望に応える施策と位置付けているが、世の中総値上げの風潮の中では、そうした商品の確保はどんどん難しくなっていったという。その一方で、確実に利益が取れる商品に扱いを絞り込み、全体の取り扱い数も減らし効率的な事業を目指すという動きも見られた。
社会的な課題としても取り上げられるAIの活用、DX戦略の採用もまた、卸売業にとっては必須のものとして認識されている。現状の仕組みやコストなどの問題から実現が困難だと思われていたが、活用できなければ自身のビジネスにも影響が出るとあっては、可能な部分からでも着手していこうという意識だけは広がりつつあるように見える。
加えて近年は、非競争分野での協業、協働による取り組みが目立ち始めている。一部の同地域内での活動にとどまっていた共同配送の動きも、中堅、大手を含めて動き出している。複数のメーカーによる同一卸への配送に加え、複数の卸による同店舗への配送が進めば、間違いなくサプライチェーンの効率化が図られ、全体最適につながる。
また、最近のトピックスとして、プラネット、あらた、PALTACが3社共同で、商品マスタを一元管理し、業界全体、また製配販売の流通プロセスで共同利用する新会社「プロダクト・レジストリ・サービス」を設立、来年4月からのサービス開始を発表し、内外の話題を集めている。会見の場には3社のトップら役員に加えて全国化粧品日用品卸連合会の森友会長らも出席、業界挙げての取り組みに昇華し、中小卸にもメリットのある事業となることを期待するメッセージを寄せた。具体的な活動はこれからだが、全体に大きな価値をもたらすことを願う声は大きい。
(詳細は「日用品化粧品新聞」11月10日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)

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