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特集・殺虫剤——新たな提案、更に進む

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特集・殺虫剤——新たな提案、更に進む

インテリア性や新たな効果で新規獲得へ



 

 春先の気温上昇を背景に好調なスタートを切った今年の殺虫剤市場。虫よけプレートを中心に店頭の早期展開も目立つなど、小売業の強い販売姿勢もうかがえる。昨年からアース製薬がその呼称を「虫ケア用品」に改めるなど大きな動きも出ており、本格的な需要期を迎える今後、業界全体の動向が注目されそうだ。

 昨年の殺虫剤市場は、春先の天候不順や、前年ほど残暑が厳しくなかったことなどから、前年比5・5%減の887億円だった(大日本除虫菊調べ)。ヒアリ対策の需要増で話題を集めたものの前年を上回るには至らなかった。ここ5年間を見ると、2013年から順に、947億円、949億円、878億円、939億円、887億円。前年を下回ったのは、空間用虫よけの表示に対する消費者庁命令が影響を受けた15年以来。900億円台に戻した昨年から一転、再び800億円台に落ち込んだ。

 昨年のカテゴリー別の動きを見ると、最も規模の大きいハエ・蚊用は、8・0%減の346億円。蚊取り線香、エアゾール、ワンプッシュエアゾール、液体、電池式と軒並み前年を下回った。虫よけも、春先の数字が伸びず、6・1%減の201億円。空間用は7・7%減の112億円、人体用は3・5%減の83億円と不調。不快害虫用は1・8%減の160億円。その中で、アリ用が6・1%増の35億円、ダニが5・3%増の20億円。特に、特需のあったアリと異なり、順調に数字を伸ばしたダニ用は今後も期待が持てそうだ。 

 唯一、前年から横ばいと規模を維持したのがゴキブリ用。捕獲器は7・7%減の12億円だったが、エアゾールが2・7%増の38億円、ベイト剤が横ばいの83億円だった。ゴキブリ用エアゾールは、隙間に噴射して駆除する新製品などの投入が目立ったことが好調の要因と言えるだろう。

 今年ここまで30%増で推移。3〜5月の活性化推進が奏功

 今年の市場は、4月上旬の時点で約30%増で推移。前年がこの時期不調だったことを考えても、好調と言っていい数字だろう。

 各社は、昨年苦戦したものの、規模の大きさや潜在需要の高さから、空間用虫よけプレートを中心とした3〜5月の活性化を促進。「この時期に苦戦すると、消費者の購買意欲が1年間を通じて低くなり、全体的に伸びない」(メーカー関係者)ことから、これまで以上に重要な時期と位置づけるメーカーも多い。気温の状況によって大きく売り上げが左右される時期だが、気温が高ければ確実に伸びは見込めることから、準備をしっかりしておいた小売店が今年は結果を残していると言えるだろう。

 話題を集めている新たな施策では、大日本除虫菊が「虫コナーズ」に、1年後の自分に向けて投函するはがきを封入。はがきが戻る1年後に「虫コナーズ」の買い替えを伝えるフレーズを入れて、毎年の定期購入者を増やそうという狙いだ。既に多くのはがきが届くなど、来年の活性化に向けて同社では手応えをつかんでいる。

 大手メーカーがそれぞれ個性的な商品でユーザーの裾野拡大へ

 今年は大手各メーカーが差別化を図るべく、それぞれ個性的な商品を投入している。トップシェアメーカーのアース製薬は、市場のリードを自社の役割と考え、幅広い分野に新たな価値を提供する。特に、従来の5倍の噴射量のプッシュ式スプレー「アースおすだけノーマットスプレータイププロプレミアム」、15分の燃焼で12時間効果が続く「アース蚊とりお香」、幼虫を駆除し、ヤブ蚊を2週間発生させない「アースヤブ蚊ジェットプロプレミアム」の3品に注力。その他、スキンケア発想やボタニカルな世界観を取り入れた人体用虫よけなどを展開。「虫ケア用品」として新規ユーザーの開拓を積極的に進める。

 これまでになかったものとして注目を浴びているのは、大日本除虫菊が「コックローチゴキブリがうごかなくなるスプレー」に採用した“脱皮缶”フィルム。剥がすとイラストの無いシンプルなデザインになるもので「ゴキブリ用エアゾールと思えるものを目の届くところに置いておきたくない」という消費者の不満を解消する。前述の通り、ゴキブリ用エアゾールは昨年も伸長しており、潜在需要の更なる顕在化に流通関係者も期待を寄せる。

 フマキラーは、感染症への消費者意識の高まり、確かな殺虫効果などの要因から伸長を続ける「効きめプレミアシリーズ」を更に拡充。高付加価値、高効力を追求したシリーズは今春も、肌に優しい有効成分「イカリジン」を高配合し、舞い散りにくいジェルタイプとした「天使のスキンベープジェルプレミアム」など新アイテムを追加した。その他、高いレベルで速効性と持続性を確保した「おすだけベープスプレーハイブリッド200回分(不快害虫用)」など、徹底して効き目にこだわったアイテムを続々と投入している。

 その他のメーカーも、効き目や簡便性の追求、新たな使用シーンの提案などを強化しており、どれだけ消費者の琴線に触れる施策を展開できるかがこれまで以上に重要な鍵となってきそうだ。

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