マスク市場現状分析/競争環境は健全化へ
現在のところは昨年度並みの推移
コロナ禍の始まりから今日に至るまで、マスク市場はかつてないレベルで揺れ動いてきた。当初は急激な需要増への対応に追われる一方、不織布以外に布やウレタン、その他の素材を用いた製品の台頭、中国を中心とした海外製品の大量流入などを経て、市場規模の増減を繰り返しながら、ようやく需給バランスが落ち着いてきた印象だ。社会情勢や生活者の意識・行動の変化に伴い新しいニーズも生まれつつある。市場の動向を追った。
まずは市場の数字的な動きから。出荷数量の推移や今後の見通しについて全国マスク工業会の横井昭会長(横井定)は、同会会員の実績を見た限り「昨年4月から今年3月まで130億枚程度と見込んでいる。現在のところは昨年度並みの推移となっているが、流通在庫、メーカー在庫に加えて家庭内在庫も加味して考えると、今年後半にかけて減少していくと考えられる」と語る。ただし、コロナ禍の収束が見えてきたとしても昨年度並みの推移を維持するとも言う。消費そのものが少なくなっても、企業や家庭での在庫が備蓄に回り、購買は続くのではという考えによるもの。
提案の幅を広げることが市場全体の鍵に
実際のところ、少なくとも直近2年間は大きな変化が続いた市場だけに、先々を読み解くのは難しい。大手メーカーの試算によると、金額面での市場規模は2021年で2300~2500億円と見られる。数字に幅はあるが、狂想曲のように需要が伸びた20年の3000~3500億円との比較で3~4割減。流通独自の調達も含めて店頭で商品が不足することが無くなった頃から需要が落ち着いてきたと言える。これに対して22年の予測は、参入各社や調査会社によってバラつきはあるものの、最大で21年並み、最小で25%減という見方が強い。
あるメーカーでは「どこまで昨年の実績を維持していけるかが課題で、そのための施策の打ち出し方が重要」と語る。家庭内在庫が増えつつある現在、ユーザーの商品選択や購買行動は、その人なりの理由やこだわりに基づく傾向がますます強まりそうなだけに、どれだけ提案の幅を広げられるかが市場全体の鍵を握る。
(詳細は「日用品化粧品新聞」2月7日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)