【注目ブランド戦略・大王製紙】ローションティシュー「贅沢保湿」6年ぶりに改良

ブランド力強みに市場をリード
ティシュー、トイレットロール共にトップシェアメーカーの座を維持する大王製紙。消費者における「エリエール」のブランド認知度や商品満足度は高いものがあり、紙の地位向上の中心的な存在として業界をリードしている。ホーム&パーソナルケア国内事業部ヒューマン・ファミリーケア営業本部の小川満上席執行役員本部長にトップシェアの要因や、市場の価値創造に向けた考えなどを聞いた。
――まず、この春の新製品の状況について聞かせてください。
「この春は『エリエール消臭+(プラス)トイレットティシュー』を全面リニューアルしました。大きなポイントは、従来の消臭効果はそのままに、防臭効果を加えた点です。人々の生活は、在宅時間の増加により、自宅のトイレを使用する機会が増えました。そういったことを背景に、ロールの芯に防臭コート成分を配合することで、尿ハネなどによる嫌なにおいの発生を抑えるものです。競合品には無い新たな価値なので、当社の強みとして打ち出していきたい商品の一つです」
――市場構成比も高まる長尺でも新しい展開がありました。
「『エリエール i‥na(イーナ)トイレットティシュー』の3・2倍巻きを発売しました。当社ならではの柔らかさを担保した上で長尺化しつつ、できる限りコンパクトにしたものです。3・2倍という数字は、コロナ以降の1世帯3~4人家族トイレットロールの1カ月の平均購入量が、以前より少し増えて約315mであるという当社の調査結果を反映し、1カ月の量として対応したものです。長尺は市場全体の構成比の3割ほどに高まっています。新たなニーズを掘り起こしていけば、伸び率は更に高まるはずです」
――長尺はやはり伸び率が高いわけですね。その他、新たなカテゴリーではソフトパックのティシューが伸長するカテゴリーの一つです。
「ソフトパックは、持ち運びに便利で置き場所に困らないという手軽さが支持されています。当社のソフトパックの『エリエール +(プラス)ウォーター』と汎用品の『エリエール i‥na(イーナ)ティシュー』も前年を上回る販売量で推移しており、新市場の構築に貢献していると言えます」
――この秋の展開に目を向けると「エリエール 贅沢保湿」のリニューアルを発表しています。
「肌へのこすれリスク軽減を目指した独自の製法を採用し、肌への優しさや柔らかさをより高めました。保湿カテゴリーにおいても、品質強化でユーザーの裾野拡大を図っていきます」
新たなマーケットの構築へ
――ティシューやトイレットロール以外のカテゴリーも新たな提案が目立っています。
「コロナ禍において衛生・除菌意識が高まり、ふきんや雑巾を使わず、ペーパータオルを使う人が増えていることや、キッチンタオルについてもその利便性からシートの需要が高まっていることを背景に、生産設備を増強し、昨年秋にキッチンペーパーとペーパーふきんの『ラクらクック』を、お手拭きや拭き掃除など様々なシーンに対応できるペーパータオル『Plus+キレイ(プラスキレイ)』を発売しました。発売以降、好調な動きを続けています」
――業界の最重要課題である値上げについてお聞きします。
「当社は3月22日から、業界で一足早く価格修正を発表し、スタートしました。ある程度進めてきましたが、当社の上がり幅に比べ、市場全体の価格はそこまで上がっていないのが実状です。価格を修正しても変わらず販売店様やユーザー様にご愛顧いただいており、これもエリエールブランドの品質に対する支持や高い安心感から生み出された結果だと捉えています。価格修正については、コストの上昇が急激ですので、各社様も検討されているかと思いますが、当社も収益改善に取り組みつつ、引き続き適正価格としていくため、検討していきます」
――最後に、市場発展には何が重要と考えているのかを聞かせてください。
「次のマーケットをどうつくっていくかがポイントだと思います。使い分けやシーン別の提案、SDGsの訴求など新たな付加価値化につながる提案を広げていき、更なる需要を創造していければと考えています。前述の防臭効果のあるものや3・2倍巻きのトイレットペーパー、ソフトパックのティシューなどは当社のマーケティング力が消費者需要をうまく捉えてヒットにつながったと考えています。また、需要と供給のバランスについてもよく話題となり、当社も増産を計画していますが、前述した次のマーケットをつくっていくこと、そして様々な影響から輸入品が安定しない中、需要と供給のバランスを取りながら業界全体をリードしていくことが当社の役割だと認識しています」