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【ティシュ・トイレットペーパー市場】値上げ一定の成果、商品の新価値追求も

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【ティシュ・トイレットペーパー市場】値上げ一定の成果、商品の新価値追求も

 価格帯を維持していくことが業界の最低限の課題

 ティシュやトイレットペーパーなどの家庭紙市場に変化が見られている。世帯浸透率はほぼ100%に近く、新たな使用者層の掘り起こしを含めた大幅な市場拡大の実現は難しいが、新たな便益の提供による市場価値の創造に向け、各メーカーがそれぞれの路線で打ち出しを進めている。

 家庭紙の話題と言えば、まず、昨年、今年と大手、中小メーカーが行った価格修正だろう。家庭紙は、単価状況と物流コストの構造上、これまでも値上げを幾度も発表、実施してきたが、なかなか目標を達成するまでには至っていなかった。
 しかし、今回は、他の日用品や食品などあらゆる商品の値上げが一般化していることなどもあり、十分と言えないまでも着実な成果を得たようだ。東京紙商家庭紙同業会の各分野の安値~高値をまとめた調査によると、昨年5月のトイレットペーパー再生紙55~60m12ロールは「248~298円」(本体価格、以下同)だったが、今年5月は「298~328円」に、同じくトイレットペーパーパルプ60m12ロールは「428~468円」から「498~528円」に上昇。ティシュ180~200組5個パックは「298~398円」から「398~428円」に、150~160組5個パックは「228~278円」から「298~318円」に上がっている。今後について、各メーカーでは「原燃料や資材、為替などの動向から一概にゼロとは言えないが、秋口での再度の値上げは考えていない」ということから、ひとまず今の価格帯を維持していくことが、業界の最低限の課題と言えそうだ。ただ、出荷量を見ると、経済産業省の統計では、ティシュもトイレットペーパーも1~5月の累計では大きく前年割れしている。これについては「いろいろな捉え方があるが、生活防衛意識の高まりで、家庭内在庫を減らしているのでは」(メーカー関係者)と買い控えの傾向が家庭紙にも表れていることがうかがえる。

 「ソフトパック」のシェア増

 どこまで進むかソフトパックの付加価値化
 市場の変化では、ティシュのソフトパックのシェア上昇がその筆頭と言えるだろう。ソフトパックと言えば、価格訴求の輸入ティシュを中心にこれまで市場が構築されてきた。最近は、価格面だけでなく、コンパクトなため「置き場所を取らない」「持ち運びに便利」といった利便性が支持され、更に大王製紙が付加価値品、汎用品でこの分野に積極的に進出していることで勢いが加速。ソフトパック全体の今年1~5月累計の数量前年比は44%増、市場シェアは2割を超えるにまで高まっている。ただ、ソフトパックの中心商品である輸入ティシュの同期間累計の前年比も30%増であることから、低価格化の波が押し寄せているとも考えられる。その一方で8月には、大王製紙が自社の代表ブランド「エリエールティシュー」でもソフトパックを発売するなど「安い」以外の価値がどう創出されるか、今後の動向に注目が集まりそうだ。
 トイレットペーパーでは、ここ数年、伸びてきた長尺のシェアが「4割を超え、近いうちに5割に達する勢い」(メーカー関係者)とのことで、こちらは、物流コストの削減が図れることなどからパルプ、再生紙メーカー共に展開を強めており、従来の12ロールから主役の座が変わるのもそう遠い将来ではないことが考えられる。
 その他、環境負荷低減の動きも強まっている。大手を中心にFSC認証紙やバイオマスインキの使用が積極的に進められ、日本製紙クレシアはプラスチック不使用の紙100%のウェットシートを、王子ネピアはティシュの取り出し口のフィルムを無くしプラ使用量を25%カットしたティシュを発売している。
 これまで「価格」が商品購入における大きなポイントだった家庭紙だが、様々な付加価値が「価格」を超えるようなメーカーの施策によって、業界の資産価値が高まることが期待される。

 (詳細は「日用品化粧品新聞」7月3日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)
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