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【有力メーカーの決算から】構造改革で課題乗り切る

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【有力メーカーの決算から】構造改革で課題乗り切る
値上げ、コスト増、物流、インバウンド

 有力メーカー各社の決算が出そろい、様々な要素から多くが増収減益基調で着地した。昨年は原材料価格の高騰を始め各種コストの増大、値上げ、物流その他の問題が山積し、その解決へ向けた取り組みが目立ったが、各社共に必死の踏ん張りを見せ、今後の成長に向けた布石を打った企業も少なくない。主要企業の実績を追った。

 花王の2023年12月期は、事業強化へ向けた構造改革の推進に明け暮れたと言ってもよい。ベビー用紙おむつ事業を一部整理し、ペット事業や茶飲料事業は他社へ譲渡、また「戦略的値上げ」で原材料高騰を吸収するなどしてきた。売上高は前期比1・2%減、営業利益も5割近い減少となったものの、24年度には「事業ポートフォリオ経営を更に進展させ、変革を進めてきた事業を安定収益、成長ドライバーへと転換させていく」(長谷部佳宏社長)ことで、速やかに業績を回復させていく計画だ。衣料用洗剤、UVケアなどでヒット商品を生み出すなど、今後への期待が高まる。

 一方で、コロナ禍を乗り越え成長軌道に戻してきたのがユニ・チャーム。23年12月期の売上高は4・9%増加し、自身初の1兆円超えとなった。コア営業利益も7・0%増で、これを含む全ての利益項目で過去最高を記録している。「価値転嫁」と称する、商品の価値を高めつつ実践した価格改定、また、注力する事業分野での積極的な施策が奏功した。年平均成長率7%を掲げ、26年までに売上高を1兆1500億円に引き上げることを目指す。

 ライオンの23年12月期は、当初計画に未達だったとして決算発表前に業績の下方修正を打ち出したが、海外事業の成長もあって3・3%増収となった。反面、国内市場に投入したファブリックケアの大型新商品が目標を下回り推移したことが影響した。24年度は、主力のオーラルケア分野で展開する新ブランドで市場開拓を目指している。

 化粧品大手は海外、特に処理水問題などで買い控えの起きた中国市場、トラベルリテール市場の低迷が大きく響いた。資生堂の23年12月期は、売上高8・8%減、譲渡の影響などを除く実質ベースでも1・8%減。それでも日本国内では低価格品が好調、中高価格帯の回復も見られ、これまで進めてきた構造改革の効果も24年度には発現してくると見られる。

 コーセーの23年12月期も同様の傾向が見られた。売上高こそ3・9%増加したものの、利益率の高い中国、韓トラベルリテール事業が大きく減収となったのに加え、マーケティング費用などもかさんで営業利益は27・7%減。ヒット商品に恵まれた日本国内の売り上げが2桁増を記録する一方で、アジアでの減速が響いた。

 小林製薬の23年12月期は、インバウンド需要が復調気配なのに加え新商品効果もあって、国内外ともに増収を果たし、売上高は4・3%増だった。しかし、原材料高騰の影響が続いていることで営業利益、経常利益共に3%ほどマイナス。

 アース製薬も原材料高騰が響いて利益を減らしたものの、虫ケア用品の拡大、ASEANでの伸長も寄与して、売上高は3・9%増となった。24年度には主力の虫ケア用品に続く柱を育成するため、入浴剤や口腔衛生用品への投資を積極的に進める考えだ。

 各社共に総じて厳しい数字が並ぶ23年度の決算となったが、新たな中期経営計画の策定、構造改革の推進、新しい収益確保のための取り組みも少なからず公表されている。ここまで続いてきた生活防衛意識も多少は緩やかになってくるとの読みもある。

 経済状況を始め事業を取り巻く環境は楽観視できないが、いくつかの課題を抱えながらも着実な前進が求められる24年度となりそうだ。


(詳細は「日用品化粧品新聞」2月26日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)
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