【新潮流界隈マーケティング<第5回>】【KEEN寄稿】

「韓国コスメはSNSが強い」の正体
―データ分析で分かった界隈での発話の密度―
KEEN株式会社が提供する界隈マーケティング支援サービス「KEEN界隈DB」は、「どの界隈で、どのような文脈でブランドが語られているかを理解し、最適なコミュニケーション施策へとつなげる」をコンセプトに、SNS時代の美容マーケティングにおける新しい情報構造を読み解くための視点と手段を提供している。本連載では、「界隈」を単位に動く美容消費の実態を、具体的な事例とともに考えていきたい。韓国コスメのSNSの巧みさはよく語られるが、実態は曖昧だ。KEENの界隈データベースで検証すると、差は集客の「人数」ではなく界隈内の発話「密度」にあった。
成分が議論される「成分界隈」(11・4万投稿)を物差しにすると、韓国発のアヌアの新規言及アカウントは月平均411人。対して国産トップのブランドAは502人で、人数では日本が上回る。課題は認知や集客ではなく、同じアカウントが複数回語らない構造にある。
アヌアは単一の界隈に発話者と投稿を集中させ、1投稿あたりの反応数を高めていた。新規言及アカウントがどの界隈から流入したかを見ると、12万人超の大界隈より、数千人規模の「エイジングケア」「美白」といった悩み特化界隈からの転換効率が約4倍高い。Qoo10のメガ割による増加を差し引いても自然流入はフラットで、販促は土台ではなく上乗せとして働いていた。
見落とせないのは、密度の高い場では「自分の肌には合わなかった」といった声も同時に生まれることだ。実際、1年間の発話には否定的なものも相当量含まれる。国内ブランドの多くは安全性を優先し、否定を抑える設計だ。合理的だが、発話のコントロールは選択的には働かない。ネガティブが出ない環境は、ポジティブな熱量も生みにくい。韓国ブランドが得ているのは好意ではなく賛否を含む発話量そのもので、発話量と安全性はトレードオフだ。問題は、それを意識して選んでいるかである。
この差を日韓のものづくりの違いに帰すのは早計だ。両者はブランド年齢も客層も商品構成も異なり、特定できるのはKPI設計と発話許容度の差だ。
再現可能な視点は三つ。界隈を広げるより主戦場を決めること。起点を人口の小さい悩み特化界隈に置くこと。KPIを新規発話アカウント数とその質、そして発話が反復するかを示す再発話率に置くこと。
悩み特化界隈は効能表現と重なり法務・薬事上避けられてきたが、回避すべきは自社発信のリスクであり、ユーザーの発話まで抑える必要はない。設計すべきは、自社が何を語るかではなく、すでに語られている会話のどこに自社を置くかである。
(KEEN代表・小倉一葉)
(詳細は「日用品化粧品新聞」8月24日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)





