【新社長に聞く経営の羅針盤/アイスタイル ・遠藤宗社長】生活者とブランドの出会いを創出

Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せに
日本最大級のコスメ・美容の総合情報サイト「アットコスメ」の運営だけでなく、リアル店舗やECも展開し、化粧品市場で存在感を発揮しているアイスタイル。ブランド、生活者を様々な形でサポートし、市場活性化に大きく貢献している。ここでは9月26日に就任した遠藤宗社長に、現状や今後の抱負を聞いた。
——これまで力を入れてきたことを教えてください。
「アイスタイルのビジョンである『生活者中心の市場の創造』を体現するリテールビジネスの構築に取り組んできました。例えば『アットコスメストア』を立ち上げた時には、ブランド横断した商品ラインナップとし、それらを自由に試せる環境をつくりました。生活者が支持してくれたことで、徐々にメーカーも一緒にやりたいと言ってくださるようになりました」
——ブランドとの信頼関係を築くこともできたとか。
「アットコスメはブランドの皆さんとメディアとクライアント、小売り店舗と卸先のように、様々な関係性で接点持たせていただいていることがプラスに働いて、ありがたいことに各ブランドとフラットにいろいろなことを話せる環境にあります。特に東京・原宿の旗艦店『アットコスメトーキョー』ができてからは、我々の目指すところを改めてご理解いただき、ブランド側からこんなことがやりたいと相談されることも増えました。」
——リテール部門で言えば、ECが大きく成長しましたね。
「コロナをきっかけにして化粧品メーカーがECに目を向け始め、ユーザーが増えて市場がいきなり拡大しました。当社では以前から、多くのお客様にECでのお買い物を楽しんでもらうために、ブランドとの対話を重ねて着実に取り扱いブランド数を増やしたり、年に一度のスペシャルイベントを催しサービス認知を高めるなどの準備をしてきたので、成長の波に乗れることができました。リアルで取り引きを重ねてきたからこそ、コロナ禍で店舗が閉まる中、ECに進出していなかったブランドも安心して商品を取り扱わせてくれました」
——会社の舵取りを任される立場となりましたが、どのようなことを進めていきますか。
「自社の方針を大きく変えるつもりはありません。生活者とブランドとの出会いを、店舗、EC、そしてアットコスメというメディアを活用して創出することが当社の目的。より良い出会いをつくるために、このベースを変える必要は無いと思っています。昨年、より生活者やブランドに貢献できる存在になれるようにとの思いを込め、会社のミッションを『Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう』に改めました。日本で一番、生活者やブランドを理解し、ブランドが困った時にはアイスタイルに相談しよう、生活者がコスメ・美容に関して分からないことがあったらアットコスメを見ようと思ってもらえる存在を目指します」
——業界での存在感はますます増していきそうですね。
「信頼できる相談先になるには、もっともっとメーカー、ブランド、生活者のことを知る必要があります。また信頼してもらうためには、我々のことを知ってもらうことも大事です。ブランド向けセミナーを増やすなど、我々の経験などを積極的にシェアし、我々が持っているデータをオープンにしていくことで、アイスタイルの存在感はゆるぎないものになっていくはずです」
生活者、ブランドからの信頼を重ねていく
——業務提携など、積極的な施策も話題となっています。
「会社である以上、売り上げ、利益を上げなくてはいけません。この数年苦しい状況が続いたので、改めてしっかりと利益を出すということに取り組みたいと思います。続けていると厳しい事業は整理し、攻めることができる状況は整いました。アマゾン、三井物産と業務資本提携を結んだことは、成長を加速していく契機にもなるはずです」
——化粧品専門店「東京小町」の事業授受にも注目が集まりました。
「店舗改装のタイミングなどで、徐々にアットコスメストアに屋号変更していこうと考えています。販売力がある人材を育てるのは非常に難しいため、何よりも従業員資産を受け継げるのは貴重な機会です。コロナ禍で苦しい状況にある中で、店舗のスタッフがネットにコンテンツを上げたり、ライブ配信をしたりしてECの売り上げにつなげましたが、それを見て店に来る人も多く、人の力は改めて大きいと感じました。今後も機会があれば、M&Aも積極的に考えていきます」
「当社は小売業が主体ではありませんので、店舗はブランドと生活者の接点だと考えています。そのため極端なことを言えば、買う場所は他でも構いません。この空間が楽しい、ワクワクすると思ってもらえて人がたくさん来れば店頭でのデータが蓄積でき、当社が提供するマーケティングサービス、店頭スペースの売り上げなどにもつながります。アットコスメの店舗の集客力の源泉のひとつはこのコンセプトだと考えています。買わなくてはいけないプレッシャーがあると人が集まりません。メーカーを巻き込みつつ小売業をサポートするなど、業界の盛り上がりにつなげることも進めたいと考えています」
——アットコスメトーキョーは観光地化しているとも聞きました。
「アットコスメを象徴する場となり、自分たちがこんなことをできている、と社員が自信を持ち、会社に元気を取り戻すきっかけにもなっています。また、ここにもあのような施設があれば面白いなど、いろいろな可能性を周囲が考えてくれるようになりました。良い場所があり、タイミングなどが合えば、他の場所への出店も考えたいですね」
——今後の展開も楽しみにしています。
「アットコスメもアットコスメストア・アットコスメショッピングも、クチコミのクオリティーの高さや公平性、価格の安定性などが信頼されて成り立っているものです。そこは絶対、引き継いでいかなくてはいけない部分。信頼を裏切らないように常にチェックしながら、生活者、ブランドからの信頼を重ねていけるよう取り組みます」
(詳細は「日用品化粧品新聞」10月17日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で)