【オーラルケア市場】若年層の関心集めるために「国民皆歯科健診」にチャンスあり
ハミガキの2022年の市場規模は約1350億円と推計
近年、全般的には堅調な推移を見せるオーラルケア市場。コロナ禍を経て、口腔衛生は全身の健康につながるとの認識も広がり、付加価値の高い商品や提案も相次ぎ登場。更に拡大基調が続きそうだ。カテゴリーの性質から動き方に多少の格差はあるものの、歯科医師会や行政、各地域などと連動した啓発活動も再度盛んになってきた。また、国が明らかにした「骨太の方針」における国民皆歯科健診は、参入各社と市場の将来に大きな希望をもたらしそうだ。最近の統計から、各分野の現状を追った。
ハミガキ
大手メーカーの試算によると、2022年の市場規模は約1350億円と推計され、対前年伸長率は1ポイントほど。近年続いているプラス成長を維持した。ただし、直近では最も低い伸び率にとどまっている。
メーカーのマーケティング担当者は「大型新商品や新たな提案を持ったアイテムが登場する頻度によって、その年の伸び具合が変わるという、昨今の傾向を端的に表している」と分析する。すなわち、オーラルケア意識が上向いているとはいえ、人口減少に伴う数量的な拡大は期待できず、高付加価値商品の投入で平均単価を上昇させ市場拡大につなげるという状況がここまで継続してきたと言える。
価格帯別の動きは、この3年間で500円未満の低価格帯が3ポイント減って50％ほどを占める。代わって500～999円の中価格帯が2ポイント伸び、全体の3割。1000円を超える高価格帯も1ポイント伸びて約2割を占める。
特に50代以降の中高年層向けを中心に、中～高価格帯の商品が店頭露出を高めるようになって久しい。人口減の一方で進む高齢化が、現在の市場に大きく貢献しているというわけだ。
効能・効果別では、中心的存在の歯周病向けが35％で、虫歯用を含めれば全体の半数以上という比率。若年層の関心を高めるために大きな役割を果たすと言われる美白、口臭といったところも歯周病に続くサブカテゴリーとして頭角を表しつつる。今後の市場成長の鍵を握るのは、オーラルケア意識が高くないと言われる若い世代の取り込みで、どんな商品やサービスで関心を高めていくか、様々なアイデアの登場が期待される。
ハブラシの22年の市場規模は660億円
ハブラシ
2019年から20年に掛けて、コロナ禍による外出自粛、買い物機会の減少による影響を大きく受けて前年割れしたものの、21年からは回復基調に入り、更に高みを目指す動きが見られ始めた。22年の市場規模は660億円、前年比1％増ながら、コロナ以前のレベルに戻るには、もう少し時間が必要とされる。
関係者の間では、一日の使用回数を増やす、あるいは1カ月ごとの交換などを提唱しているが、実質的に思ったほどの変化は見られない。しかし、自分の歯をできるだけ長く、健康な状態を保ちたいとするニーズが高まるのに連れて、より付加価値の高いアイテムを求める層も増えてきた。金額ベースでは、汎用価格帯の150円未満が5ポイント減って17％なのに対し、250円以上の商品は全体の40％近く、150円以上は45％に上る。「ハミガキとは異なり“道具”としての役割があるだけに、特に口腔トラブルが多い中高年層のユーザーは、この点にこだわる人が多い」（メーカー担当者）。
それでも「100円以下の商品を求める人は人数ベースでは半分以上」（同）で、特に若年層ほど購入価格を抑えがちなことから、ここに焦点を当て、機能性や形状、色・デザインなどで若い世代に特化したハブラシも登場し始めた。中高年層に向けた中高価格帯も、一時はコロナ禍の影響を受けたが、回復の兆しを見せている。
洗口液・周辺商品
前年比2・5％増で成長中の洗口液だが、ヘビーユーザーが増える一方、口臭予防に限らず様々な切り口の商品が投入されている中「どのターゲットに何を訴求するか」が、まだ低いとされる使用率のアップに必要だ。周辺商品の中では、歯間ブラシ、デンタルフロス、ワンタフトブラシなどが堅調に推移してきたが、コロナ禍で動きが一時的に停滞しつつも、再度浮上していく見込み。特に、国民皆歯科健診への動きが追い風になりそうだ。
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