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【SDGs特集】環境保全に向けてリサイクル拡充、企業単独、業界協働で多彩な施策を推進

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【SDGs特集】環境保全に向けてリサイクル拡充、企業単独、業界協働で多彩な施策を推進

 店舗に回収ボックスを設置し、リサイクルを推進

 海洋ごみとなることで、環境への悪影響が懸念され、廃棄の仕方や在り方などが問われるプラスチック。使用量削減に向けて、業界各社も様々な施策を進めている。近年は使用済み容器の回収を行い、再び資源に循環する試みを進める企業も増えている。
 自社店舗や自社コーナーで回収
 象徴的な事例が、メーカー自らが運営する店舗での回収作業だ。一例では、コーセーは、2020年9月から直営店などで容器回収をスタートした。同年11月からはテラサイクルが運営する回収プログラムを活用し、使用済みスキンケア製品のプラスチック空き容器を直営店舗のメゾンコーセーやイオン直営店のコーセー化粧品コーナーで回収。回収量に応じて得たポイントはサンゴ育成活動費用として寄付し、サンゴ礁の再生、地球環境保全へとつなげている。
 また、ファンケルは21年7月から、自社対象品の使用済み化粧品容器を回収し花や緑を育てる「植木鉢」にリサイクルする取り組みを一部直営店舗でスタート。ユーザーからの要望に応える形で、今年4月からは対象を東京都及び神奈川県の全店舗へと拡大した。植木鉢は本社がある横浜市が毎年主催している、美しい花の移り変わりが楽しめるイベント「ガーデンネックレス横浜」に寄贈。豊かな自然環境を創る取り組みに活用してもらっているという。
 その他、集めた使用済みハブラシを回収・リサイクルし、植木鉢などの新しいプラスチック製品に生まれ変わらせるライオンの「ハブラシ・リサイクルプログラム」、大手ホテルと協働して使用済みカミソリを回収し、プラスチック、鉄、アルミニウムなどの素材ごとに再利用を検討している貝印のホテル向けアメニティカミソリの回収実験、使用済みシェーバーの回収を家電量販店の店頭で実施したP&G「ブラウン」の施策など、日用品カテゴリーにおいても数多く事例がある。
 自治体との共同で進む回収事業
 企業単独での施策には限界があることから、協力して事業を進めていく必要性を指摘する声もある。その点で言えば、自治体が主導するケースは参画企業も集まりやすく、実現性が高まると言えるだろう。
 その代表的な存在が、循環型社会の実現に向けて協働し、洗剤やシャンプーなど使用済みの詰替パックを分別回収して再び詰替パックに戻す「水平リサイクル」を目指し、神戸市と小売業、日用品・化粧品メーカーなどで構成する「神戸プラスチックネクストつめかえパックリサイクル」だ。ウエルシア薬局やアース製薬、花王、牛乳石鹼共進社、クラシエホールディングス、コーセー、小林製薬、サラヤ、サンスター、シャボン玉石けん、P&Gジャパン、ミルボン、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、ライオンなどが参画。21年10月から神戸市内の75店舗に回収ボックスを設置して、詰替パックの分別回収を実施している。
 店舗への配送戻り便などを活用して集約し、収集の効率化、環境負荷を低減するといった、持続可能な回収スキームの構築を意図。メーカー各社ではリサイクル試験を通じて課題や技術を共有して、より水平リサイクルしやすい、詰替パックの素材や形状などの議論も進めている。
 水平リサイクルした詰替パックは製品として、市内店舗での実証販売を目指しており、アイデアを出し合い、市民に還元する様々なリサイクル製品も検討しているという。

 数社で協力して、容器回収に取り組む必要性も

 小売店とメーカー協働での活動進む
 小売店とメーカーとの協働事例も目立つ。イオンリテールは昨年6月、本州・四国・九州のイオン、イオンスタイル87店舗で「グラムビューティークリサイクルプログラム」をスタート。テラサイクルと、コーセー、資生堂、日本ロレアル、P&Gジャパンのメーカー4社が協働し、使用済み容器の回収リサイクルを通じて、ユーザーと企業が共に環境課題について考え、解決することを目的とする。売り場内に回収ボックスを設置し、スキンケア、メイクアップ、ヘアカラー、ヘアケアのカテゴリーであれば、購入店舗やメーカーを問わずに回収リサイクルを行う。
 アイスタイルもテラサイクルと協働し、旗艦店のアットコスメトーキョーでスキンケア、メイクアップ品の使用済み容器を回収。第1弾としてカネボウ化粧品「アリィー」が協賛し、5月4日から11月3日までの期間、実施しているところだ。その他、ロフトや日本チェーンドラッグストア協会も、店舗における容器回収プログラムを行うなど、様々な動きが広がっている。
 タッグを組んでの取り組みで言えば、持続可能な社会の実現を目指し、化粧品事業のサステナビリティ領域において包括的に協働していくことに合意した花王とコーセーの動きも見逃せない。両社はプロジェクトチームを立ち上げ、花王が推進する「化粧品プラスチックボトルの水平リサイクル」における協働を開始。使用済みの資源を化学分解によってPET樹脂の原料に変換し、再利用するもので、使用済み化粧品プラスチックボトルを回収し、化粧品ボトルへ再生する“ボトルからボトルへ”の水平リサイクル実現に向け、両社で協力しながら推進し協働スキーム構築を加速させていく構え。
 資生堂も、プラスチック製化粧品容器のリサイクルの仕組みを積水化学、住友化学と共同で開発して推進。容器回収のその先を見据えた活動に余念がない。
 プラスチック新法の影響も
 4月1日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック新法)が施工された影響も大いに出てきそうだ。製品の設計・製造から販売・提供、更に使用済み製品の排出・回収・リサイクルに至るまで、ライフサイクル全体で一層のプラスチックの資源循環を促すことを目的としたもので、関連した目標設定、及び目標達成のための取り組みの計画的な実施が求められることから、製造・販売事業者などには容器などの自主回収、排出事業者などには排出抑制、再資源化といった活動も求められる。
 1社ではなく業界内外での協力も
 今後は、リサイクル目標など数値の公表も必要とされるため、メーカー担当者からは「数社で協力して、容器回収に取り組む必要性にも迫られるのではないか。ただ回収の仕組みができたとしても、リサイクルの仕組みなどはノウハウが必要で、技術的なハードルも非常に高い。1社だけでは継続が難しいため、ますます業界内外で協働する取り組みが必要となっていくのでは」という声も挙がっている。

 (詳細は「日用品化粧品新聞」9月5日号/または日本経済新聞社「日経テレコン」で

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