【注目ブランド戦略・王子ネピア】「ネピeco」を環境の代名詞ブランドに

取出口をフィルムではなく紙製のティシュへ
――環境に配慮したこの春の新製品が話題を集めています。特長はどういったものでしょうか。
「ボックスティシュの『ネピアネピecoティシュ5コパック』と『ネピアネピecoキッチンタオル2ロール100カット』はこの春の新製品です。いずれもFSC認証紙を使用しています。その上で、ティシュは、取出口をフィルムではなく紙製にしたもので、省プラに加え、使用後にプラと紙を分別する手間が省け、更にリサイクルへの貢献にもつながります。使い終わった後は、ボックスを簡単に畳める折り畳みの線を入れています。また、外袋と取っ手にはバイオマスフィルムを採用した他、ボックスと包装の印刷はバイオマスインキを採用しています」
――同様にキッチンタオルについては。
「キッチンタオルも、パッケージをフィルムではなく、紙包装にしました。包装の印刷にはバイオマスインキを採用しています。デザインは、ティシュもキッチンタオルも、紙の原料の木が持続可能な循環型の素材であること、森を保全することは、動植物や生態系の保全につながることを表しています」
――昨年は紙包装の「ネピアネピecoトイレット2倍巻4ロールダブル」を春にオンラインショップ『nepia銀座店』で発売し、秋には全国展開を開始しました。サステナブルな価値の追求が目立っています。
「王子グループとして『持続可能な森林経営』を実践しており、当社としても、業界に先駆けてFSC認証紙を採用したり、商品パッケージにバイオマスインキやバイオマスフィルムを使用したりとこれまで環境負荷低減に取り組んできました。『ネピeco』ブランドはそれを具現化するブランドと位置付けています。環境月間の6月には、ティシュ、トイレットロール、キッチンタオルの3品を集合陳列させた売り場も見られるなど、小売業様のブランドに対する関心や期待の高さがうかがえます」
――消費者からの反響はどうでしょう。
「サステナブルな商品やアプローチを支持する人は年々増えています。前述の『ネピeco』のトイレットロール、ティシュ、キッチンタオルはオンラインショップ『nepia銀座店』と一般店頭で発売していますが、特にオンラインショップでは好評をいただいています。オンラインショップは配送料などを含めるとリアル店舗より割高になりますが、それでも人気商品ということは、やはり環境に配慮した商品への需要が高い証ではないでしょうか。なお、植物由来の素材を80%使用した『ネピアネピecoバイオマスマスク』も、オンラインショップ限定で販売していますが、通常のマスクより高単価にもかかわらずファンを獲得できています」
――トイレットロールやキッチンタオルの長巻き化も環境配慮につながります。長巻き市場は伸長していますが御社の展開の特長は。
「当社では、ファーストブランドのトイレットロールで2倍巻きを展開していますが、これは当社オリジナルの特長です。キッチンタオルは業界に先駆け、100カットを発売しました。100カットは、発売当初なかなか認知が広まりませんでしたが、利便性の良さが徐々に認められ、現在は市場シェアトップを確保しています。ティシュでは『ネピeco』は200組ですし『ネピアネピネピ』にも200組を追加しました。長巻きや大容量化は物流効率のアップや環境負荷低減につながるという面でも流通関係の方から高い評価を得ています」
――昨年実施された、あるSDGsに貢献する企業ブランド調査では11位にランクインしました。化粧品・トイレタリー部門では2位でした。どういった感想をお持ちですか。
「最近ではSDGsに関連した商品やサービスであれば、商談でも話題となりますが、我々はSDGsという言葉が無い10年以上前から、FSCやユニセフ様を支援する『ネピア千のトイレプロジェクト』など様々な活動を行ってきました。その実績が認められてのものだと思います。社員の士気昂揚にもつながりますし、有り難いランキングだと捉えています。なお、2008年から開始した『千のトイレプロジェクト』は、24年までに東ティモール全土にトイレの普及の目処が立ったため、プロジェクトのスタート以来の役割を達成し、活動を終了しました」
「鼻セレブ」「ネピeco」の情報発信力を更に強化
――環境活動が目立つ一方『鼻セレブ』を中心としたブランド力にも定評があるのでは。
「2020年には、日本ネーミング大賞で『鼻セレブ』が大賞を受賞し、保湿系ティシュの代名詞としての認知がかなり浸透してきたと実感しています」
――ブランド育成の方向性については。
「『鼻セレブ』の保湿系に続き『ネピeco』を環境系ブランドの代名詞として育てていきたいと考えています。王子ホールディングスとしては、100年前から植林活動をしていますし、当社のDNAという観点でも『ネピeco』はぜひそれを実現させたいと思っています。そのためには、ラインアップの拡充と、店頭での面の拡大が必要になってきます」
――最後にマーケティングの部署として重視していることを聞かせてください。
「重視しているのは、新たな価値の打ち出しです。申し上げたように『ネピeco』の各商品にはそれぞれ差別化した機能がありますし、ブランドの世界観やパッケージデザインにしても同様です。今後は『鼻セレブ』『ネピeco』のブランド力や情報発信力をもっと強化し、紙おむつやマスクなどを含めた『ネピア』全体のファンになってもらうための入り口になるブランドとして育てていきたいと思っています」